参院予算委員会で15日、2015年度補正予算に関する総括質疑が行われ、民主党・新緑風会の石橋通宏議員は(1)「国内総生産(GDP)600兆円」目標の政策的妥当性と実現可能性(2)「GDP600兆円」が達成された場合のわが国の財政と国民生活の展望(3)低年金受給の高齢者への「臨時給付金3万円」の政策的妥当性(4)労働者保護ルールの改悪と雇用の非正規化・不安定化の進行(5)労働基準法改正案(残業代ゼロ法案)と解雇の金銭解決制度が雇用破壊と生活破壊に拍車をかける危険性と、本来あるべき労働法制改革――等について取り上げ、政府の認識をただした。

 石橋議員は冒頭、同日午前2時頃長野県軽井沢町で発生したスキーバス転落事故を取り上げ、政府のこれまでの対応状況や今後の対応方針等を石井国土交通大臣に確認。亡くなられた方々へのお悔やみを述べるとともに、2012年4月に発生した関越自動車道高速バス事故以後、政府として安全対策や過重労働対策の強化などさまざまな改善を行ってきたなかで起きてしまったことについて、これまでの対策の問題点等を含めてしっかりとした対応をしてほしいと求めた。

 そのうえで、安倍総理が第2次安倍政権発足時に国民に対し、早期にデフレから脱却することを約束したにもかかわらず、現在は「デフレからの脱却には至っていない」「まだ道半ば」などと発言していることから、「アベノミクスは失敗だ。なぜデフレ脱却がこの3年間でできなかったのか」と質問。2%の物価安定目標に到達できなかったのは想定外の原油価格の大幅下落によるものだと一貫して主張する安倍総理、黒田日銀総裁に対し、「ミクロの変動はマクロのトレンドには影響を与えないから考慮する必要はない。異次元の金融緩和をしてマネタリーベースを増やしていけば実現すると説明してきたのが日銀で、それを指示してきたのがアベノミクスだ」と断じた。

石橋議員

 また、黒田総裁が2%の物価安定目標に関し、「最新時点の見通しでは2016年度後半頃に達成する可能性が高いとの見通しを持っている」として、2016年12月まで年間80兆円のペースで増加した場合にはマネタリーベースが430兆円強になるとの見解を示したことを受け、石橋議員がGDPに匹敵するくらいの国債を日銀が持つことのリスクについて見解をただすと、黒田総裁は「量的質的金融緩和が日銀の財務に影響を与えることは事実だが、日本銀行の責務である物価の安定に必要な政策。財務の健全性に留意しつつ必要な政策として行っている」などと答えた。石橋議員は、「相当危ない橋を渡っている。日銀のリスクは相当深刻。行くも地獄、引くも地獄と言う状況に陥っているのではないか」と懸念を表明した。

 パネル1

安倍政権が労働法制改悪

安倍政権が進める労働法制改悪労働基準法改悪法案

「働き過ぎ防止策」だけ抜き出し再提出を要請



 国民生活の状況については、国民生活基礎調査で「苦しい」と回答する割合が高齢者世代よりも子育て世帯で高いことから、そこに雇用問題が影響しているとの見方を示し、1997年からほぼ一貫して実質賃金は低下を続け、正規雇用は減少し、1990年代から一貫して非正規雇用が増加しているというトレンドのなかで安倍政権下でも実質賃金は低下していると指摘。加えて、安倍政権のこの3年間の政治は、2013年の通常国会の所信表明演説での「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」発言に象徴されるように、労働者の生活をないがしろにしてきたと厳しく批判し、今国会で政府が提出予定の労働基準法改正案については特に、これを取り下げて、「働き過ぎ防止策」だけは賛成できるので、1回廃案にしてそこだけ出し直してほしいと求めた。

民主党が目指す労働法制改革

 そのうえで、ワークライフバランス、少子化対策、介護の対策などを含めて、今必要とされている政策は労働改革がなければできないとして、「全ての労働者が安心して働いて暮らしていける社会をつくることが重要だ」と強調。「雇用の原則を正社員型雇用、無期直接雇用、フルタイムの雇用にしていく、多様な形態の正社員を認めるが均等待遇、同一価値労働同一賃金を認める方向で頑張っていく、社会保険の適用拡大などを進めることで安心を守りながら労働時間規制を徹底的に強化していくといった改革こそが今政治に求められていることではないか」などと訴えた。

PDF「20160115参院予算委員会 石橋通宏議員配布資料」20160115参院予算委員会 石橋通宏議員配布資料