衆院予算委員会で1日、2016年度政府予算の集中的締めくくり質疑が行われ、緒方林太郎議員が質問に立ち、憲法観などについて安倍総理らの認識をただした。
緒方議員は冒頭、安倍総理が前日の岡田代表の質疑で子ども手当について「民主党の中でもこうした発言をした方もおられたと思うが、つまりは子育て支援、子ども手当というのは両親や家族からいわば養育費が払われるということではなくて、まさに国家から直接子どもたちに養育費が行くことによって、自分たちは両親に対して何の義務を感じる必要がないという議論もあった」と発言したことを問題視。安倍総理がその根拠として民主党政権時の衆院本会議での民主党議員による賛成討論を挙げたが、その内容は「子どもはこれまで家庭で育てるものという考え方ですべての負担を家庭で負っていたが、現在の日本では家庭の中だけでは解決できない問題が山積しているので子どもは社会で育てる」というもので、総理の指摘は事実誤認の上の曲解だとして謝罪と答弁の撤回を求めた。安倍総理は「議論があったという部分と、要旨を申し上げた」などと繰り返すだけで謝罪も撤回もなく、緒方議員は総理としての資質が問われると指摘し、抗議した。
憲法問題に関しては憲法改正を参院選の争点にするかを安倍総理に確認。総理は「自民党は結党した際、憲法改正を党是としている」などとして明言を避けたが、緒方議員の重ねての追及に自民党憲法改正草案(以下自民党草案)のなかで改正発議に必要な3分の2以上の議席確保が可能なところから改正していくとの認識を示した。しかしどの改正に着手するかについては「草案のどれを選ぶかは憲法審査会の議員の責任において収れんすることを期待する」などと語るにとどめた。
憲法9条改正に関しては、同委員会質疑で「わが党は変えるという自民党草案を出している。自民党総裁として同じ考え」と安倍総理が改正を明言したことを踏まえて緒方議員は質問。自衛隊を憲法上位置づけるのみならず国防軍を作るという観点に立つかという質問には安倍総理は、「自民党草案のなかでは自衛隊を国防軍に位置づけるという記述がある」と発言したうえで自身も同じ考えに立つと語った。そして、自衛隊に関して最終的には集団的・個別的を含めてすべての自衛権を行使すべきと考えるかについては、自民党草案に「必要」と書かれている旨を説明し、自身も同様の考えを示した。しかし緒方議員が自衛隊が公の秩序の維持、治安維持を通常のミッションとして行い得ると自民党草案に明文化されている点に関する確認を求めたのには「閣法として出すことはないので自民党草案にどうあるかは答え差し控える」旨を述べて、答弁を避けた。都合の悪いことは自民総裁と総理の立場を使い分けて答弁を逃げる安倍総理に「これでは議論は深まらない」と緒方議員は指摘し、その姿勢を批判した。