枝野幸男幹事長は19日午後、国会内で定例記者会見を開き、(1)熊本地震(2)環太平洋経済連携(TPP)承認案と関連法案の審議――等について発言した。

 枝野幹事長は冒頭、「熊本地震で亡くなられた皆さんのご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆さんにお悔やみを申し上げる。また、多くの皆さんが被災をされ避難生活をされており、お見舞いを申し上げる」と表明。そのうえで、県内で44人が亡くなり(同日昼過ぎ現在)、大規模な斜面崩落などが発生した南阿蘇村では少なくとも計8人が行方不明になっているとして、「政府では警察、消防、自衛隊など大変厳しいなか2次災害の不安もあるなかで大変なご努力をいただいているところだが、引き続き全力を挙げていただきたい。昨夜も震度5強の地震が発生している、またいつ大きな地震が来るかも知れないという不安のなかで大変不便な避難生活を強いられている方々、精神的にも肉体的にも相当限界に近づいているのではないかと感じている。個別の被災者の皆さまに対する物資、フォローが行き渡ることが重要であり、政府には万全の措置を求めていきたい」と述べた。民進党としても対策本部で現地や行政からのヒアリングを重ねてきた意見や要望をまとめ、政府・与党に提言を申し入れる考えを示し、日程については本日もしくは明日を念頭に現在先方と調整中だとした。

 また、現状では防災担当大臣を本部長とする「非常災害対策本部」が設置されているのみで、内閣総理大臣を本部長とし、防災担当大臣と官房長が副本部長、すべての閣僚、危機管理官等が本部員となる「緊急対策本部」は設置されていないと指摘。東日本大震災では即時「緊急対策本部」を立ち上げ、総理大臣の下、全省庁、政府を挙げて対応に当たったと振り返り、「『緊急対策本部』は阪神淡路大震災を受け、阪神淡路級の大規模災害に対応するべく設けられた制度で、前例としては東日本大震災の際に設置されたのみだ。最初(14日夜)の地震、本震と言われた(16日未明)地震まで来て被害状況が相当広範かつ10万人単位の被災者が出て、安倍総理自身も非常災害対策本部の会議に出られている状況だ。総理自身が陣頭指揮を執るという思いでおられるのなら、法律上どちらに該当するべきなのかという行政的な評価はあるかも知れないが、政治的には阪神淡路、東日本大震災に近い大きな被害を受けている事態だと思う。緊急対策本部に切り替え、総理自らが本部長として陣頭指揮を執ってもらいたい」と要請した。

 熊本地震を受け九州電力川内原発の稼働停止を求める声があることには、「そうした皆さんの不安を解消できるように政府には説明や検証を求めていきたい」と述べた。

 TPPの審議をめぐっては、「10万人を超える皆さんが食料、水に困っている。(総理出席のもとで総括質疑を行った)18日の段階では10人近い皆さんが行方不明で救命・救出活動に当たっている状況で国論を二分するようなテーマの審議を進めるというのは、『何を無理されているのかな』という強い違和感を覚えているところだ」と政府・与党の対応をあらためて問題視。そのうえで、同日の玉木雄一郎議員の質疑では、「政府・与党の説明が違っていたことが明らかになった。いわゆる重要項目は聖域として守るという国会決議もあったが、『重要5項目のなかに含まれているもので、今回の交渉で無傷のものはない。今回の協定の前後で影響を受けていない、変更がないものはない』という答弁をせざるを得ないところに追い込んだ。まさに聖域を守れなかった。都合のいい部分の数字だけ取り出しているが、品目ごとに見るとすべての聖域だったはずの5項目は何らかの形で今回変更になることを国会で答弁せざるを得なくなった。まさに国会決議、重要5項目を守ると言ってきたことが、事実と違うことが明らかになった」と指摘し、今後国会が開かれるのであれば引き続き厳しく追及していくと力を込めた。