衆院本会議で31日午後、民進、共産、生活、社民が共同提出した「安倍内閣に対する不信任決議案」が審議され、4党を代表して岡田克也代表が趣旨説明を行い、江田憲司代表代行が賛成討論に立った。不信任決議案は採決の結果、賛成少数で否決された。
岡田克也代表趣旨弁明
岡田代表は冒頭、安倍内閣を信任し得ない理由として(1)公約違反の経済失政、アベノミクスの失敗(2)立憲主義と平和主義への重大な挑戦(3)国民に対して強権的で不正直な政治――の3点を列挙。「安倍総理は直ちに退陣すべきだ」と断じた。
公約違反の経済失政、アベノミクスの失敗
2014年12月の総選挙の際に、安倍総理が消費税10%への引き上げについて、「再び延期することはない。皆さんにはっきりと断言する」「必ずやその経済状況をつくり出すことができる」などと言って大見得を切ったことを振り返り、来年4月に予定されている消費税10%への引き上げを2019年10月まで再延期すると伝えられていることに「その原因は安倍総理の経済失政にある。2019年10月まで再延期ということは、無責任にも安倍総理の総裁任期後に先送るとともに、2020年度基礎的財政収支黒字化の財政健全化目標を放棄することだ。これだけでも内閣総辞職に値する重大な公約違反だ」と批判した。安倍総理が伊勢志摩サミットで「世界経済がリーマンショックの前と似た状況である」との認識を示し、「G7はその認識を共有し、強い危機感を共有した」と発言したことにも言及。「安倍総理が『リーマンショック前夜』とあおり立て、『世界経済の危機』を誇張しているに過ぎない。サミットの場を利用して、自らの経済失政をごまかし、消費税引き上げ再延期を正当化しようとするなど前代未聞、わが国の名誉と信用を大きく傷付けるものだ」と切り捨て、「国民生活は破壊され、格差と貧困が拡大している。経済失政、アベノミクスの失敗を正直に認めて、公約違反を国民に謝罪し、即刻退陣すべきだ」と求めた。
立憲主義と平和主義への重大な挑戦
昨年9月に安倍政権が強行成立させた安全保障法制をめぐり、「憲法違反であることは明らかだ」とあらためて指弾。民進党などが今国会に提出した、この安全保障法制を白紙化することを柱とする議員立法を一度も審議することなく全く無視したことを取り上げ、「『これからも丁寧に説明する努力を続けていく』という国民との約束はどうなったのか、立憲主義をないがしろにし、国民を欺いた責任は極めて重大だ」と厳しく非難した。安倍総理が目指す憲法改正の本丸は第9条であるとして、「立憲主義と平和主義への重大な挑戦。絶対に認めるわけにはいかない」と力を込めた。
国民に対して強権的で不正直な政治
安倍内閣が極めて強権的で、国民に対して正直に語らず、不都合な真実を隠し続けてきたことを問題視。特に、URと甘利前大臣の政治とカネをめぐる問題、TPP交渉とその関連資料、報道の自由の制約と国民の知る権利の侵害――の3つを挙げ、「任命責任を果たすつもりがない」「国会軽視、国民無視の安倍内閣の体質をまさに象徴するもの」「民主主義の重大な危機」だと批判した。加えて、国民に全く寄り添うことのない、普天間基地移設問題をめぐる対応にも触れ、安倍総理は即刻退陣すべきだとした。
むすび
岡田代表は最後に、「今こそ、思いを行動に移すときだ。夏の選挙は、安倍政権と国民の良識の戦いになる。安倍政権の暴走を止め、政治の流れを変える。そうでなければ、日本の将来は危うい」と訴え、民進党はその認識を国民の皆さんと共有しつつ、その先頭に立つと誓った。
江田憲司代表代行賛成討論
安倍内閣不信任決議案に賛成の立場で討論に立った江田代表代行は、不信任すべき理由として(1)アベノミクスの失敗と増税先送りの責任回避(2)違憲の安保法制の強行による憲法の平和主義と立憲主義の危機(3)言論統制による民主主義の危機――の3点を指摘。
経済政策をめぐっては特に、「消費増税の再延期なら、アベノミクスが失敗したことを総理自らが認めたということにほかならない」「公共事業は安倍政権になって補正予算を含む決算ベースで年間10兆円にまで膨れ上がったが、あまりにもばら撒いたため『消化不良』を起こし、財務省によると毎年2~3兆円も使い残している」「度重なる景気対策、補正予算編成等で霞が関官僚はとりあえず、税金を積んどく『基金』を300以上も作ったが、支出されないで残ったお金が毎年数千億円オーダーで国庫に返納されている」などと多くの問題点を挙げ、重大な公約違反、国民を欺く予算編成、税金の無駄遣いだと批判した。
「今日の世界経済はリーマン・ショック並みの危機に陥るリスクがある」などと主張し、それを消費増税再延期の理由にするという安倍総理のサミットの政治利用についても、「日本の品格をおとしめた」と指弾。「『強い者をさらに強くすれば、弱い者にもそのおこぼれがいくだろう』という『トリクルダウン』のアベノミクスに対し、民進党は、介護や子育て、教育支援等をはじめ、『人への投資』を通じた『公正な分配』の実現により、普通の人から豊かになり幸せになれるボトムアップ型の財政政策に転換し、構造政策や成長戦略では、規制改革による新規参入・起業促進、イノベーション等による生産性の向上等を図っていく」と説いた。