蓮舫代表は9日、岩手県入りし、台風10号により甚大な被害を受けた野田村、岩泉町の被災現場を視察。復旧に向けた被災者からの要望を踏まえ、今回の台風災害対策について予備費を使っての提案を検討するとの考えを明らかにした。

 野田村では、県内最大規模のサケ・マスの採卵を誇る下安家漁協の孵化(ふか)化場を視察。台風で水槽が土砂や流木で埋まり電気施設も被害を受け、本年度の稼働が困難に直面していると漁協関係者から説明があり、早期復旧に向けた国からの支援を要請された。

 岩泉町では、台風被害で9人の死者を出したグループホーム「楽ん楽ん」(らんらん)、豪雨で操業停止になっている「岩泉乳業」を視察。蓮舫代表らは「楽ん楽ん」前に設けられた献花台で花を手向けて合掌し、犠牲者に哀悼の意を表するとともに、施設関係者をお見舞いした。

 「岩泉乳業」では、山下欣也社長や全従業員の出迎えを受け、蓮舫代表は一人ひとりと握手し激励した。同社は周辺地域の生乳を集約する施設であり、操業停止は地域の酪農産業全体に影響を及ぼすため、早期復旧への協力を要請された。また、同町内にある地元住民の避難所になっている「龍泉洞温泉ホテル」も訪れ、被災住民をお見舞いし、救援物資を関係者に手渡しした。

 一連の視察を終えて蓮舫代表は記者団の取材に応じた。被災者と交わした会話について問われ「時間が経っても決して癒えることのない大震災の傷に加えて、今まで聞いたことがないような台風災害だったと聞いた。精神的負担に一生懸命向かっている姿を見、その声を聞いた。重い重い言葉だった。私たちが国会議員としてできること、政局とか政党の問題ではない。どこまで支援ができるのかしっかり検討し、行動に移したい」と答えた。

 安倍総理の来県、民進党の今後の対応について問われ「総理が被災地に入ったことは地元の人にとって力強いと思う。野党である民進党も視察することによって、(政権側と)現状認識を共有できた。生活再建支援はもちろん、審議中の補正予算に(今回の災害対策費が)計上されていないので、予備費でどういう提案をできるのかをしっかりと考えたい。党岩手県連の仲間と一緒にできる限りのことをしなければならない」と答えた。

 東日本大震災、今回の台風災害と相次ぐ被災を受け、激甚災害指定を受けても自己負担が重く再建ができないという現行制度の問題に対しては、「市町村や県による上乗せ支援に国が迅速にどう応えられるかが課題だ」と指摘。さらに「今回の地場産業への打撃は1年間の生活の不安につながる」と多くの事業者から懸念が示されたため「スピードも課題だ」との認識を示した。

 今回の台風災害を受けてインフラ整備のあり方についても問われ「参院で審議中の補正予算はインフラに傾倒しているが、今回の台風などの自然災害対策が予算に計上されていない。これには率直に怒りを覚えた。迅速に対応しなければ、産業支援にも生活支援にもつながらない。私どもは(今回の台風災害への対策を)引き続き提案していきたい」「山からの水の逃げ場がなくて巨大な木がなぎ倒され流木が生活圏に飛び込んでくる。それが結果として大惨事につながるという過去にない災害であるとすれば、インフラ整備は地球温暖化、環境変化に対応したものに変えなければいけない」などと答えた。

 視察には、地元の党岩手県連から代表の黄川田徹衆院議員、幹事長の階猛衆院議員、第2区総支部長の畑浩治元衆院議員、党本部から役員室長の柿沢未途衆院議員、参院災害対策特別委員会理事の川合孝典参院議員らが同行した。

大量の流木が残る下安家サケ孵化場にて。右から階衆院議員、畑元衆院議員、蓮舫代表

大量の流木が残る下安家サケ孵化場にて。右から階衆院議員、畑元衆院議員、蓮舫代表