参院厚生労働委員会で17日、大手広告代理店・電通の過労自殺問題などを踏まえた雇用・労働問題の集中審議が行われた。民進党ネクスト厚生労働大臣の足立信也議員が質問に立ち、(1)勤労感謝の日という概念への違和感(2)過労死認定基準(3)国連の社会権規約委員会の日本への勧告(4)医師の過重労働対策(5)男女共同参画の観点から医療機関の時間外労働の男女均等の在り方(6)2016年9月に発足した働き方改革実現会議メンバーに労働者の立場を代表する人が少ないことへの懸念――等の問題を取り上げた。

 質問の冒頭、足立議員は「2014年11月に施行された過労死等防止推進法に基づいて、今月は過労死等防止啓発月間だが、これだけ過労死について問題になっているのに厚生労働委員会として何もこの問題について集中して審議しないのはおかしいとの提案をして本日の質疑の開催になった」と述べ、政府・与党も過労死対策に向けてなお一層の取り組みを行うよう問題提起した。

 足立議員は、(1)時間外労働が1カ月100時間超、(2)または2カ月以上平均して月80時間超の場合――を過労死認定基準としていることを踏まえ、この基準を超えて働く労働者数をただした。厚生労働省の担当者は、そのような労働者数の把握は困難と回答。長時間労働者がいる事業所割合の調査しかない実態が明らかになった。(1)の労働者がいる事業所の割合は全体の0.8%、(2)の労働者がいる事業者割合は1.9%との答弁があったが、足立議員は「実態把握が何よりも基準だ」と述べ、「過労死認定基準を超えている人は数百万人ともいわれる。その把握からスタートしないと過労死の問題には対処できない」と指摘した。

 2013年に国連の社会権規約委員会が日本に対して行った勧告に関しても足立議員は取り上げ、過労死や過労自殺に対する勧告の要点と厚生労働省としての受け止めを確認した。勧告では日本の長時間労働や過労死について「相当数の労働者が過度な長時間労働を続けていること」「過重労働による死、職場での精神的嫌がらせによる自殺が発生し続けていること」に関する懸念が示され、(1)長時間労働防止のための措置の強化(2)労働時間延長制限の不順守に対して制裁の確実な適用(3)必要な場合は職場でのすべての形態の嫌がらせを禁止し防止することを目的とした法令・規則の採用――を勧告しているとの説明があった。

 この答弁を踏まえて足立議員は、勧告にもあるように「防止を強化することと、制裁を科すこと」が重要だと指摘、「これがわが党をはじめとする野党が提出した長時間労働規制法案につながっている」と説明した。塩崎厚生労働大臣も「しっかりと取り組まなければならないと思っている」と答弁した。足立議員はまた、「もう一点大事なことはハラスメント対策だ。日本はその点の法整備が弱い」と問題提起し、ハラスメントへの法整備も求めた。