参院厚生労働委員会で13日夕、「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」(いわゆる年金カット法案)の採決が行われ、与党の賛成多数で可決した。
採決に先立ち、民進党・新緑風会の牧山ひろえ議員が討論に立った。牧山議員は「安倍総理は、衆院で『何時間やったって同じ』と言い放ったが、参院では議論が深まっている。本日の質疑の内容を見ても、数多くの論点が残されており、審議が不十分なのは明らか」だと冒頭で指摘。反対理由の第一として「本案の年金額の改定ルールの見直しが、年金制度、年金財政の持続可能性を重視する一方で、公的年金制度の最大の役割である最低保障機能をないがしろにするものであるからだ。この2つはパッケージで議論しなければ、国民の将来不安に対応することはできない」と語った。
「公的年金の給付水準が低下すれば、生活保護を受給する高齢者世帯が増加することが懸念される。生活保護受給者のうち、高齢者の割合が今年ついに50%を超えた。年金支給額切り下げの結果、生活保護受給者が増えれば、ますます国家財政への負担は増す。本案は、年金財政だけを見て、国家財政全体を見ない法案だ」「この法案により暮らしを脅かされるのは高齢者だけではない。物価が上がっても賃金が下がれば年金が下がり、一度下がった年金は一生物価に追いつくことがなく、受給開始後の年金の実質的価値が一方的に下がり続ける。この『物価・賃金スライドの新ルール』は、現役世代や将来世代の老後にも等しく適用され、年金がカットされていく。大臣も今回の法案で将来世代の年金は増えないと、答弁で認めている」と、牧山議員は年金カット法案のもたらす結果への懸念を示した。また、「マクロ経済スライドのキャリーオーバー」について、物価が著しく上昇した場合に対応する措置が何ら規定されておらず、高齢者の生計維持に支障が生じる懸念が拭えない点を指摘した。
牧山議員はさらに、政府が本案の提出に先立って行った2014年の財政検証が、「今後100年間、物価が上がり続け、賃金はそれ以上に上がり続ける」というあり得ない経済前提に基づいている点も問題視。「年金制度改革の議論は、まず、2004年改正時の見通しが誤っていたことを認め、現実的な経済前提のもとで誠実な試算を示すところから始めるべき」とも指摘した。
法案の採決ののち、同委員会の民進党筆頭理事の足立信也議員が「国民の高齢期の生活の安心を確保することは、社会の安定を確保するためにも不可欠な課題であることに鑑み、政府は、本法の施行に当たり、公的年金制度の目的の確実な実現を確保するため、次の事項について万全を期すべきだ」として、「国民年金制度は、憲法第25条第2項に規定する理念に基づき、国民の共同連帯によって高齢期の暮らしの安定に寄与するためのものであることから、今後もその機能や役割の維持・確保に万全を尽くすこと」など8項目にわたる与野党4会派共同提出の付帯決議案(PDFダウンロード参照)を提案し、賛成多数で可決された。