蓮舫代表は24日、参院本会議で安倍総理の施政方針演説に対する代表質問に立ち、(1)文科省の天下り問題(2)教育と子育て(3)働き方改革(4)経済政策(5)日本型ベーシックインカム構想(6)財政健全化(7)安倍総理の国会に対する姿勢(8)外交政策――などについて質問した。

 蓮舫代表は、「時代が大きな曲がり角を迎えようとしている実感は私にもある。人々を追い立てるかのように技術は進歩しているが、国内に目を向ければ、昨年生まれた子どもの数は初めて100万人を切った。戦後のわが国の繁栄を支えてきた環境が曲がり角を迎えている。その中で、引き続き安定成長を実現していく考えに変わりはない」と述べた上で、「同時に、経済的な『豊かさ』に偏重するのではなく、一人ひとりの価値観を大切にし、さまざまな考え方、生き方を認め合う多様性を大事にすることが、これからの『豊かさ』だと思う。全ての人に『居場所と出番』のある社会。これが民進党の目指す未来だ」と、力強く表明した。

 文科省の天下り問題について、「子どもたちの未来を創るのは政治の責務だ。しかし、今、その教育をつかさどる文科省に批判と非難の目が向けられている。組織をあげた職員の天下りのあっせんについて、なぜ、施政方針演説で一言も語られなかったのか」と指摘し、文科省の天下りあっせんに対し率直にどのように考えるかと質問した。安倍総理は、「同様の事案がな無いか、全省庁に調査を指示した。文科省の関係者を厳正に処分した。天下り根絶に取り組んでいく」と答えた。

 「教育は国の力。子どもたちは未来だ」と述べた蓮舫代表は、政府の給付型奨学金制度創設について、「評価はするが中身が残念すぎる。対象は1学年あたり2万人に過ぎない。この規模の措置で十分だと考えるか」と安倍総理に迫った。安倍総理は、「来年度から給付型奨学金を創設することとした。必要とする全ての子どもに機会が与えられるようにしていきたい」と答弁したが、これで十分かどうかについての言及はなかった。蓮舫代表は、「民進党は、すべての子どもたちが経済的な心配をすることなく、希望する教育を受けられるよう、教育の無償化を進める。幼児教育から高等教育までの教育の無償化を目指す。教育と子育てに予算を集中投資することは、わが国の構造的な課題である人口減少を止め、女性の社会進出と活躍を促して生産性を向上させる。経済対策としても極めて重要だ。教育、教育、教育。これが私たちのアベノミクスへの対案だ」と強調した。

 働き方改革を進めると掲げた総理の方向性には強く賛成するとした上で蓮舫代表は、「野党が提出している長時間労働規制法案の審議になぜ応じないのか」「政府法案はいつ提出するのか」と質問した。安倍総理は、野党案を審議しないことについては、「野党案では省令に丸投げするなど具体例がない」とこれまでの批判的な答弁を繰り返し、政府法案提出については「働き方改革実現会議で取りまとめる実行計画に沿って早期に法案を提出する」と、具体的日程には言及しなかった。

 蓮舫代表は経済政策について、「アベノミクスを一度立ち止まり、われわれの提案する人への投資に大きくかじを切るべき」「一部でベースアップは実現したかもしれないが、全体で見れば賃金上昇より物価上昇のほうが大きく、実質賃金は4年間マイナス」「総理が誇る倒産件数統計には現れないが、2016年に自主的に休業、廃業、解散した会社の数は29500件を越え、過去最多を更新する見通しだ」と指摘し、「安倍政権の4年間でわが国がバラ色になったわけではない。安定した仕事に就けない人、経済的理由で学業を諦める人、将来の確信できない地方の皆さんなど、今の生活に必死で夢や希望を抱けない人がかつてないほどにいる。そうした方々に手を差し伸べるのが政治の役割だ」と訴えた。

 蓮舫代表は、「民進党は勤労意欲の低下という短所を打ち消しながら、中低所得者を底上げし中間層を復活させる具体策」として「日本型ベーシックインカム構想」を提案した。その柱は所得税減税と給付を組み合わせた「就労税額控除」の導入だ表明。現金給付ではなく社会保険料の支払いとして充てることで年金保険料未納問題の解決、ひいては将来的に生活保護に陥る人々をなくしていくことにつながると説明し、安倍総理に見解を求めた。安倍総理は、「これを検討するにあたっては、生活保護制度など、同様の政策目的を持つ制度との関係を整理することが必要で、慎重な検討が必要」と答えるにとどまった。

代表質問を行う蓮舫代表

代表質問を行う蓮舫代表

 財政健全化については、25日開催予定の経済財政諮問会議に提出される「中長期の経済財政に関する試算」で、プライマリーバランスの赤字幅を2020年度に0にするとしていたものが8兆円台となり、昨年7月の試算から3兆円近く悪化すると報道されているとして、「増え続ける長期債務、極めて達成不可能な財政健全化には正面から目を向けてもらわないと、その負担を担わされる次世代、未来への責任を果たすことはできない」と指摘した。

 蓮舫代表は、安倍総理の国会での姿勢について取り上げ、「あたかも民進党が国会で全ての法案に批判に明け暮れているとの誤った印象を語ったが、昨年の通常国会で私たちは適切な審議を経て納得できる法案への賛成率は87%。臨時国会での賛成率は83%で、必要な法案には粛々と賛成している」と述べ、「先の国会で言えば、強行採決ざんまいだった乱暴な自民党の国会運営、立法府を軽視し、議論は必要ないという姿勢を猛省すべきだ」と批判した。

 TPPについては、「アメリカが離脱を表明し発効の見通しがほぼなくなったTPPに代わり、GDPを14兆円押し上げる政策は何なのかを総理は語らなかったが、他のどの政策で補うのか」とただした。安倍総理は、「わが国の経済再生、地方創生のために必要な施策を着実に実施していく」などと述べるにとどまり、具体的な内容は答えなかった。

 最後に蓮舫代表は、民進党が目指す国のあり方について、「子どもたちの育ちを支え、学びを保障し、雇用の安定を生み出し、シニア世代の安心を創る。人への投資が日本の未来を切り拓くことにつながる。株価や為替に一喜一憂するのではなく、ライフステージにおける確かな安心を民進党は作り上げたいと考える。それが、日本に生まれ、育ち、生きていることに豊かさを実感できる社会に確かにつながる道だ。『国家』があって『国民』があるのではなく、一人ひとりの国民がいて『国家』がある。一人ひとりを大切にする政治を、私たちは今年も進めていく」との考えを示して質問を終えた。

PDF「参院本会議蓮舫代表代表質問(予定稿)」参院本会議蓮舫代表代表質問(予定稿)