参院本会議で17日午前、「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を議題に質疑が行われた。

 同法案は、失業等給付についてリーマンショック時に創設した暫定措置を終了して別の新たな暫定措置を創設するなどの見直し、失業等給付に関係する保険料率と国庫負担率の引き下げ、育児休業を6カ月延長しても保育所に入れない場合等の6カ月の再延長を可能にすることなどを定めるもの。

 民進党・新緑風会の石橋通宏議員が質問に立ち、(1)本法案の提案理由と現在の雇用情勢(2)雇用保険制度での国庫負担の位置付けと本則水準の設定根拠、国庫負担率引き下げ提案の正当性、本則復帰時期の確約(3)特定受給資格者の一部のみ所定給付日数を延長する理由と根拠(4)特定理由離職者に対する所定給付日数に関する拡充措置を恒久化しない理由(5)育児休業の2歳までの延長と女性活躍との政策的整合性――等について塩崎厚生労働大臣に質問した。

 石橋議員は冒頭、森友学園の問題について取り上げ、3月23日に衆参両院で籠池理事長の証人喚問を行うことを民自の国対委員長間で合意したことに「遅すぎた感はあるが、真相究明に向けての第一歩として歓迎したい。政府には国会に説明責任を負っているのは政府の側であることをあらためて指摘しておきたい。特に安倍総理には、その先頭に立って、国民の疑問や疑念を払拭するための努力を誠実に尽くしていただくことを強く要請する」と注文をつけた。

 雇用保険法改正法案に関連しては雇用情勢に対する課題認識について「安倍総理は、繰り返し、有効求人倍率が上昇し、失業率が低下していることをもって雇用は良くなっていると言い続けている。しかし、求人があっても、不安定かつ低賃金な非正規の雇用ばかりだったり、正規の職でも、仕事の価値や労働の量に見合う賃金が保障されていない雇用が中心なのであれば、ミスマッチが広がるばかりで、労働者の生活及び雇用の安定にはほど遠い」との見方を示し、「そのような問題認識に立てば、今回の雇用保険法改正案は、もっと違う中身になったのではないか」との見解を示した。

石橋通宏議員が塩崎大臣にただす

 雇用保険制度の国庫負担のあり方については、1947年の雇用保険制度創設時に国庫負担割合が3分の1とされたが、1959年に本則が4分の1となり、1992年以降は一時期を除き、負担率が本則よりさらに引き下げられる暫定措置が常態化していることを「当分の間の措置」としながら減額が恒常化していることが国庫負担の立法趣旨に鑑みて正当なのかとの疑念を示した。そして今回の改正では、その国庫負担率を本則の10分の1に減額したことを「これは国民の雇用の安定に対する政府の責任を放棄するものではないか」と疑問視した。石橋議員は「本則からの減額措置で浮かせた財源が年間いくらで、それがいったい何に使われてきたのか、今回の10分1への引き下げで生じる約1000億円もの財源が、今後3年間一体、何に使われるのか」と塩崎大臣に説明を求めた。法案で「3年に限った措置」としているが、減額がまた延長される懸念が拭い切れないとして、10分の1減額措置が延長されることなど絶対にないと明言してほしいと求め、また法案に暫定措置そのものを、その後できるだけ速やかに廃止すると書かれていることについて「3年後には直ちに本則に戻すべき」だと指摘した。

 塩崎大臣は「今回の引き下げは雇用保険制度の安定的な運営を確保できることを前提としており、3年間に限定して行うものであり、国庫負担の基本的な考え方を変更するものではない。今年度予算で10分の1への引き下げで生じる財源は約1100億円だが、これは一般会計予算全体のなかで適切に使われるものと承知している」などと述べるにとどまった。

 育児休業期間を一定の場合に2年までに延長することについては、「当事者の皆さんにヒアリング調査を行い、その結果として当事者の多数が2年までの延長を希望したのか。当事者の皆さんの希望は、待機児童を一刻も早く解消することではなかったのか」と指摘。「育休2年を利用するのは、ほぼ女性労働者になってしまうと思われるが、そうなればますます女性をキャリアから遠ざけ、男女間格差を広げてしまう。安倍政権が標榜する『女性の活躍』と明確に矛盾する政策だ」と批判した。

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