参院本会議で21日、政府提出の「農業競争力強化支援法案」の趣旨説明・質疑が行われ、民進党・新緑風会の田名部匡代議員が質問に立ち、農業資材の集約、農業者戸別所得補償制度――等について農林水産大臣らの見解を求めた。

 冒頭、本年3月に東日本大震災の被災地で出会った女性から「この6年、仕事で気を紛らわせながら1日1日を過ごしてきた」と言われたことを紹介。今なお笑顔の裏に悲しみや苦しみを抱えながら過ごしている被災者に対して、政治家は「心を砕き、希望を1つ1つ積み上げていかなければならない」が、復興担当の今村大臣が自主避難者に発した「自己責任」「裁判でもなんでもすればいい」という言葉は「被災者を傷つけるものでしかない」と強く批判。「そうした心ない言葉に、子どもたちは敏感に反応し、さらなるいじめにつながっていくことすら想像もできていない」と述べ、「このような大臣が取るべき行動は1つ、辞任だ」と指弾した。安倍政権では、失言、暴言が続発し、記憶を消したり書類を消したりが行われ、「国民を愚ろうしている。このような政治を許してはいけない」と力を込めた。

 本法案の目的が「事業再編または事業参入を促進するための措置を講じ、農業者による農業の競争力強化の取り組みを支援することで、農業及び農業生産関連事業の健全な発展に寄与する」としていることについて「事業再編等の取り組みが本当に農業者の所得向上につながるのか全く見えない」と指摘。そして農業資材のコストを下げて農業所得を向上させる方法として、肥料や配合飼料を念頭に銘柄を集約することが規定されていることについて「業界の再編や事業者数の整理で、数が減少すれば、寡占状態となり、競争原理が働かず、逆に価格の高騰を招くことになるのではないか」と実効性に疑問を呈した。そのほか法案に関連して、農業生産関係者の努力規定、農業機械業界の再編、農産物流等事業に係る事業再編、事業参入の促進等についてもただした。

 そのうえで、安倍政権の下で自給率向上を旨とした食料の安定供給の確保という農政の重要課題への対応が危機にあると指摘し、「農業を再生し持続可能なものとし、競争力をつけるためにも民主党政権が導入した農業者戸別所得補償制度が必要だ」と提案。安倍政権が2018年に同制度の廃止を予定していることから、「こんなことで、わが国の食料安全保障や自給率の向上、また食の安全・安心を求める全国の消費者の期待に応えることなどできるのか」と政府・与党の農政を厳しく批判した。「農業競争力強化というのであれば、民進党が衆院に提出した農業者戸別所得補償制度を法制化する議員立法こそ、国会で論じられるべきだ」と述べ、審議に応じようとしない政府・与党に翻意を求めた。

PDF「農業競争力強化支援法案に対する質問(予定稿)」農業競争力強化支援法案に対する質問(予定稿)

本会議場で農相をただす田名部議員

本会議場で農相をただす田名部議員