今、焦点となっている案件について、最前線で取り組む方々にインタビューし、その本質をお伝えします。
共謀罪法案の問題点、危険性について
政府による説明が不十分なまま、衆院で強行採決された共謀罪法案。百害あって一利なしのこの法案に立ち向かうには何が必要か。国民運動局長で衆院法務委員の山尾志桜里議員に話を聞いた。
共謀罪は百害あって一利なしという珍しい法案です。刑法では、犯罪を実行した時に逮捕したり処罰をすることが原則です。しかしこの共謀罪法案は277もの犯罪で、犯罪を実行する前の段階で逮捕できるという内容になっています。人をけがさせれば傷跡や凶器が残り、何かを盗めばその盗まれた物が証拠品となるなど、犯罪には何らかの証拠が残ります。共謀罪では何が証拠になるかというと、話した内容や、やり取りをしたメールなどです。その証拠を収集するための録音や録画、ネット上でのやり取りなどを集めることが合法化され、国民の皆さんのプライバシーが侵害される監視社会に変容する恐れがあります。
私は法務委員会の質疑で金田法務大臣に対し、「共謀罪がテロ対策となる具体的な事案を挙げてほしい」と繰り返し求めてきましたが、一つとして出てきていません。つまり、共謀罪で防ぐことができるテロ事案は一つもないということです。また政府は、共謀罪の立法事実として、TOC(組織犯罪防止)条約への加盟と、テロ対策と2つの理由を挙げてきました。しかし5月19日に法務委員会で強行採決が行われたその日、金田大臣の答弁から「テロ対策」が消え、とうとう立法事実から「テロ対策」がなくなりました。テロ等準備罪という名称が、いかに偽物かということを、金田大臣自身が証明したわけです。
昨年成田空港では、900人の保安検査員のうち290人が退職されました。給与が安い、勤務時間が長い、資格を取るのが厳しいなどが主な理由でした。日本では保安体制の維持は民間任せです。主要国の中で、空港の保安体制を民間航空会社任せにしているのは日本とインドぐらいです。こうした状況を改善するため民進党は、「航空保安法案」を衆院に提出しました。この法案は、空港での保安体制を民間任せから、国が責任を持って行う体制にするものです。安倍総理もテロ対策に万全を期すというなら、こうした保安体制の穴をきちんと埋めるべきです。
安倍内閣の数の力による横暴を乗り越えるには、市民、国民の皆さんとの連帯しかありません。昨年の待機児童問題もそうでしたが、国民の皆さんの多くが納得できる主張をしっかりと訴えれば、野党でも政治を動かすことはできるし、結果を変えることができます。この共謀罪法案に私たちはそういう信念を持って立ち向かい、「今必要なテロ対策は水際対策だ」と、現実的なテロ対策を国民の皆さんにワンボイスで訴えていきます。
問題の本質
● 共謀罪で防ぐことができるテロ事案は一つもない
● 立法事実から「テロ対策」がなくなった
● 国民のプライバシーが侵害される監視社会に変容する恐れがある
象徴天皇制の安定的な皇位継承のために
事実上、70年ぶりの皇室典範の改正となる退位特例法で天皇の退位及び皇嗣の即位が実現できることになった。成立の経緯とさらなる議論の重要性について、党皇位検討委員会委員長の長浜博行議員に話を聞いた。
天皇の皇位継承というものについて、これまで私たちはあらためて考える機会はなかったと思います。昨年の8月8日の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」は、ある意味で衝撃的なものでした。ただし、考えてみればこれは当然のことです。天皇陛下も人間ですからお年を召される。自分たちの父母、祖父母が高齢になった時、私たちは子どもとして、孫としてどう接しているか、身近な問題として考えてみると分かりやすいと思います。
今年は日本国憲法施行70周年を迎え、今上天皇は、日本国憲法で定める「象徴天皇」として即位された初めての天皇です。憲法には、皇位の継承について第2条に、「皇室典範による」と書いてあります。では皇室典範にはどう書いてあるかというと、その第4条で「崩じたとき」、つまり天皇が亡くなられたときに天皇が代わると書いてあります。
民進党は、陛下のお気持ちを理解し、崩御でないと天皇を代わることができないという制度でいいのかという問題意識に立ち、他党に先駆けて昨年10月から議論を重ね、そして同年12月に、・皇嗣が成年(18歳)に達していること・天皇陛下が退位のご意思を示していること・皇室会議の議によること・で皇位継承は認められるという結論に達しました。
民進党は、このことを基本として今回の両院の正副議長による取りまとめ会議に参画し、議論をリードしてきました。各党それぞれに考え方がありますので、今回は特例法によるものということでしたが、次の天皇以降の皇位継承についても、今回の特例法が先例となることを妨げないという確認もできました。これにより事実上、70年ぶりの皇室典範の改正で天皇の退位及び皇嗣の即位が実現できることになりました。
また「女性宮家の創設等」という文言が付帯決議に盛り込まれましたが、言葉だけにとらわれてはいけません。皇位の安定的な継承を図っていけるかどうかという、本質的な議論を今すぐにでも始めなければなりません。今回の特例法では、退位についての議論を行いましたが、「皇位の安定的継承」「象徴天皇制をどう維持していくのか」という重要な問題の議論は不十分です。
日本国憲法第1条にこうあります。
「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」
わが党は今後もしっかりと取り組んでいきます。
問題の本質
● 今回の特例法では天皇の退位についての議論が主に行われた
● 「皇位の安定的継承」に向け女性宮家の創設等、継続的な議論が必要
● 「象徴天皇制をどう維持していくのか」という問題の議論も必要
(民進プレス改題26号 2017年6月16日号より)