代表選挙3日目の23日午後、代表選挙管理委員会(神本美恵子委員長)主催の東北ブロック候補者討論集会が弘前市内で開かれ、前原誠司、枝野幸男の両候補が200人を超える党員・サポーターや国会議員、自治体議員などを前に自らの所信などを表明し、会場参加者からの質問に答えた。候補者集会の開催前には弘前駅りんご広場で街頭演説会も行った。
前原候補は自らの所信について、夏の全国高等学校野球選手権大会で6本のホームランを打ち大会記録を更新した広陵高校の中村奨成選手が母子家庭であることを引き合いに出し、1人親家庭の実態に触れた上で、「生まれてきた環境で子どもの(さまざまな)機会に不平等がある社会はおかしい」「全ての子どもに教育のチャンスを与える。そんな国にしよう」「民進党のためではない、日本のため、将来のために、国民が不安を解消するために、もう一度私が民進党を立て直す」と訴えた。
枝野候補は、幹事長として全国各地を訪れ、地域活動を目の当たりにした経験から、現場の声を党全体で共有することが必要と述べた。さらに創意工夫を共有し知恵を出し合うことが大きな力となると述べ、「草の根から、地域から、ボトムアップで民進党を変えていこう。私はボトムアップ型のリーダーとして、皆さんの力を引き出す、そうした場、そうした空気、そうした流れを作っていきたい」「党を変えるのは1人のリーダーではない。皆さんの力が必要だ」と訴えた。
その後、候補者同士が互いに質問し答えた。
枝野候補は、今の日本の危機の1つとして憲法に基づいて政治を行うという立憲主義が壊されていると指摘、「憲法を壊す安倍総理のこれまでの動き、そしてその流れに対しては徹底して戦わなければいけない」と述べ、前原候補の見解をただした。
これに対して前原候補は、「全ての法律は憲法に合致していないといけない」と述べ、安保法制審議の際、総理大臣補佐官の礒崎陽輔参院議員が「この法律は必要なんだ。だから認めて欲しい」と答弁したことを挙げ、「100歩譲って、その中身が必要なものであったとしても、憲法違反の法律はあってはならない」と述べ、安保法制について見直していくと語った。
一方、前原候補は、街頭演説で枝野候補が言及した「地域に根ざす雇用」について、医療・介護以外の分野以外で、どういう雇用を創出するのか考えをただした。
これに対して枝野候補は、「大きな分野は1次産業」と述べ、世界的な競争原理の中に位置づけるのではなく、国土や地域社会を守るという、市場では評価しにくい側面を政治が補う必要があるという見解を示した。また一方で、世界と競争できる1次産業については後押ししていくとも述べ、そのために地域に根ざした政党活動や政治が必要だとの考えを示した。
会場参加者からは、農業者が安心して農業に従事できず、後継者に引き継ぐことができない「猫の目農政」(=ころころと変わる国の農業政策)について、将来を見据えた政策にするために必要なことは何かと問う質問が出た。
枝野候補は、世界に輸出できる部分については経済政策だが、農業政策の相当な部分は地域政策だと述べ、農業政策の位置づけを変える必要があるとの見解を示した。
前原候補は、自民党政権下での政策の他に「政権が変わることで農政が変わるということはあってはいけない」と述べ、与党と話をしながら政策の一貫性をどう担保するかが重要であるとの見解を示した。
この他、参加者からは、「地方自治体議員の声を聞く組織体制をどう作るか」「選挙での野党連携について、政策実現に向けて地域事情に柔軟な対応をどう進めて行くのか」「女性議員をどう育てていくか」「党の方針や政策が決まった際に周知するための全国的な街頭活動などの仕組みづくりをどうするか」といった質問や「今回の代表選で負けたほうが幹事長になるのはどうか」との提案があった。
討論会後には、衆院青森4区補選(10月10日告示、22日投開票)の山内崇公認候補者があいさつし、「私たちにとって、この代表選は新たなスタート。ここまでは大変苦しかったが、将来2人には総理大臣になってもらうくらいの思いで応援していく」と述べた。