民進党・希望の党による「働き方改革検討のための合同会議」(石橋通宏参院議員=民進と岡本充功衆院議員=希望が共同座長)の第3回会合が6日夕、国会内で開かれ、(1)全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)(2)全国過労死を考える家族の会(3)日本弁護士連合会(4)日本労働弁護団(5)均等待遇アクション21/真のポジティブアクション法の実現を目指すネットワーク――の各団体から、政府の「働き方改革」に関する法案に関してのヒアリング、意見交換を行った。
運輸労連の世永正伸中央副執行委員長は、「トラック業界は、全業種の中でも過労死が最も多い業種で、非常に厳しい労働環境にある。長時間労働の原因は低賃金と低運賃にある。付帯作業や手待ち時間、再配達の発生などで長時間労働になっている。今回の改正で他業務の5年遅れで年間960時間の上限規制が適用されるが、休日労働が含まれていない。そもそも上限は720時間以内とするなど、すべての労働者に同じ上限規制が適用されるべき」と求めた。
全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表らは、「大切な家族を長時間労働、パワハラ、過重労働で亡くした。証拠をそろえるなどの立証責任があり、解決までに長い時間がかかる。3年前に過労死防止法が成立したが、過労死を繰り返す社会は何ら変わっていない」「安倍政権の狙う高度プロフェッショナル制は残業代ゼロ。過労死、過労自殺をなくすために、今回の働き方改革には反対だ」「真面目な、責任感の強いものが死んでいく。こんな制度はやめてもらいたい。娘は生きる気満々だった。これ以上遺族、不幸を増やしたくない」「夫は裁量労働制で亡くなった。会社は裁量労働で過労死ではないと言った。それを証明するのは遺族で、証明するために家族も、子どももボロボロになった。不幸な子どもたちを増やさないために力を貸してほしい」など、遺族らが抱える苦しい現状、胸の内などを語った。
日本弁護士連合会の小川英郎貧困問題事務局次長は、「上限規制の問題がある。今回の働き方改革では、今まで野放しであった上限に一応法律上で縛りをかけることになるが、『月間100時間未満、年間720時間以内、6カ月平均80時間以内』ということで、行政が過労死を認定する水準がそのまま法案になっている。せっかく上限を設けても、いわゆる過労死ラインと同じものではかえって誤った認識を広げることになりかねない」「自動車運転、建設、医師等、本来長時間労働を真っ先に規制すべき業務が憂慮されている点も問題」「時間管理を解除する法律で大きな問題だ」などと指摘し、日弁連として今回の法案に反対する立場であることを報告した。
日本労働弁護団の棗一郎幹事長は、「今回の法案の陰に隠れている問題として、雇用によらない自営型テレワークの普及を政府は進めているが、これは極めて危険」「最大の問題点は8法案を一括にしたこと。長時間労働、同一労働同一賃金、高度プロフェッショナル制度、裁量労働制など、規制の強化と緩和をごちゃ混ぜにしてきたことが最大の問題。趣旨の異なる法律を一緒にやるとは何事か。野党は頑張って法案をバラバラにして審議してほしい」と法案を厳しく批判した。
均等待遇アクション21/真のポジティブアクション法の実現を目指すネットワークの酒井和子さんらは、「今度の改正で、非正規差別がなくなるかというと、全くそんなことはない。かえって差別を助長するものになる。同一労働同一賃金にするというなら、職務内容で評価する法律に変えるべき」「企業が、成果、意欲、能力、経験で賃金を変更していいと今法案にあるが、要するに企業の裁量が非常に強くなるということ。この法案は労働者のためにあるのではない」「今回の安倍政権による働き方改革は、男女共同参画視点、ジェンダー平等の視点を欠いている。現在も日本の職場では男女別の雇用管理が行われ続けている。日本の働き方を根本的に改めさせる法案を作ってほしい」と訴えた。
両党の出席議員と各団体との間で活発な意見交換が行われた。会議終了のあいさつで川合孝典共同座長代理は、「たくさんの示唆に富んだご意見をいただいた。われわれは、問題提起でいただいた内容を踏まえて、今後、衆参両院で戦っていく」と述べた。