安倍政権が推し進めようとしている働き方改革。その問題点はどこにあるのかを、民進党政務調査会の第一部会長で、「民進党、希望の党による働き方改革検討のための合同会議」の共同座長を務める石橋通宏参院議員に聞いた。

働く者の立場に立つ政党として議論を重ねる

 2012年末に第2次安倍政権が誕生したとき、安倍総理は施政方針演説で「世界で一番、企業が活躍しやすい国にする」と高らかに宣言しました。その後、解雇規制緩和の議論など、まさに企業のためとしか思えない労働法制改革の議論が官邸主導で進められ、労働者派遣法の大改悪などの法改正が行われたのです。その一環として15年に、裁量労働制の適用拡大や高度プロフェッショナル労働制の導入が盛り込まれた労働基準法改正案が国会に提出されました。後者は、07年に国民の大反対を受けて断念したホワイトカラー・エグゼンプションの焼き直しであり、「残業代ゼロ制度」とか「定額働かせ放題制度」と批判されている制度です。それが、今回提出予定の法案に含まれるのであれば、安倍政権が進めようとしている働き方改革は、一部企業のための「働かせ方改革」だとの声が上がるのも当然です。

 民進党は、16年の参院選以降、「働く者の雇用の安定と暮らしの安心のためにどのような働き方改革が必要か」という観点で、党内の厚生労働部門を中心に論議を重ねてきました。今年に入ってから、民進党と希望の党とで対案作りを進めており、最終的には立憲民主党などと「真に働く者のための働き方改革」を実現していく法案の提出を目指します。

政府案にある問題点

 政府案の最大の問題点は、8本の法案を1本の一括法案としてまとめて出そうとしていることです。本当に働く者のための改革にしたいのであれば、方向性の違うものを1本にまとめて、一つひとつの丁寧な審議や議員の表決権を奪うことは、あってはならない話です。

 法案には、私たちも賛成できる、もしくは少なくとも審議には応じられる改正内容も含まれます。例えば、残業時間に罰則付きの上限規制を導入することや、中小企業に対する残業代の割増賃金率適用猶予の撤回、さらには非正規雇用労働者に対する不合理な労働条件格差の是正などです。しかし、企画業務型裁量労働制の対象業務拡大や高度プロフェッショナル労働制は、同じ法案に含めるべきではありません。なお、裁量労働制の適用拡大については、その根拠とされた厚労省による実態調査データが偽装されたのではないかという問題が発生し、野党が追及を重ねた結果、政府は法案からの削除を表明しています。しかし高度プロフェッショナル制度は維持されていますので、これについても私たちは削除を目指し政府を追及していきます。

私たちが目指す働き方改革

 私たちは、まず働き方改革の目指すべき方向性として?雇用の原則を、期間の定めのない無期雇用、かつ直接雇用でフルタイムの雇用とすること?働く者の希望やニーズに応じた多様な働き方を、職務の価値の適正な評価と待遇の確保などに基づく均等・均衡待遇の下に保障すること?採用から雇用の終了まで、すべての職業上の差別を禁止すること??の3本柱を雇用対策法改正案に盛り込むことを検討しています。

 加えて、実効性ある長時間労働の規制を図るため、残業時間の上限規制に加えて、勤務間インターバル(休息)規制の法律上の義務付けや、労働時間管理の徹底、現行裁量労働制の適正化策などを盛り込んだ労働基準法改正案を提案する予定です。また、パワーハラスメントの法的規制が喫緊の課題となっており、従業員の安心・安全な職場環境を確保することを事業主に義務付ける労働安全衛生法改正案も準備しています。

 今回、政府案には、昨年、働き方改革実現会議及び労働政策審議会の場で労使が合意した罰則付きの残業時間上限規制が入ります。労使が合意できる残業時間の上限は、原則水準で年360時間、月45時間以内です。ただし、特別な事情を考慮して労使が合意すれば、年720時間までの特例水準が認められますが、単月の上限は100時間未満で、2カ月から6カ月の平均が80時間以内、かつ原則水準の月45時間を超えられるのは年6回までにしなければなりません。この特例上限が十分だとは思いませんが、初めて罰則付きで上限規制が法律に規定されることは評価しなければなりません。私たちは、法案の見直しを3年後として、今後の見直しで全体がさらに原則水準に近づいていくよう、さらなる前進を目指します。

(民進プレス改題35号 2018年3月16日号6面より)

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