衆院本会議で14日午後、「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」など3ACSA協定の趣旨説明と質疑が行われ、民進党・無所属クラブの升田世喜男議員が質問に立った。物品役務相互提供協定は日本との間で物資や役務の相互利用を行う枠組みを定める2国間協定。
升田議員は冒頭、東日本大震災から7年目に入ったことをふまえ、「復興はまだ道なかば。風評被害などが深刻化しているにも関わらず、一方で風化が進むことは避けなければならない。さらなる復興にお力をお貸しいただきたい。東北人の1人として心からお願いする」と出席議員に呼びかけた。
森友学園の問題に言及し、同園の籠池理事長が小学校の認可申請を取り下げ、自らも理事長を辞任すると表明していることを「これで幕引きということは到底許されない」と指摘。与党がひたすら籠池氏の参考人招致を拒否し続けていることを「このような逃げの姿勢を続けることは、国会の役割を放棄するものと言わざるを得ない。安倍総理が自らの疑惑を晴らしたいならば、積極的に籠池氏の参考人招致に応じるべき」と対応を求めたが、安倍総理は「国会がお決めになること」と逃げの答弁に終始した。
稲田防衛大臣には、同大臣が「かつて森友学園の弁護士を務めていたのではないか」との質問に「森友学園の顧問だったということはない、法律的な相談を受けたこともない」と答弁したことについてただした。「2004年10月に森友学園が起こした訴訟に関する裁判記録には、稲田大臣とその夫の弁護士が訴訟代理人として明記され、12月に開かれた口頭弁論には稲田大臣が出廷したという記録も残されている」と指摘し、「もはや、稲田大臣が虚偽答弁を繰り返していたことは明らかだ」「国会で虚偽答弁を続けるような人物が閣僚の座に留まってはいけない」と即刻辞任を強く求めた。
稲田大臣は「昨日参院予算委員会での小川議員の質疑で、私は籠池氏の事件を受任したこともなければ裁判を行ったことがない旨の答弁をしたが、これは委員会の場で突然、過去の12年前の資料に基づくご質問だったので、私のまったくの記憶に基づき答弁したもの。今朝の報道で13年前の裁判所の出廷記録が掲載された。平成16(2004)年12月9日、夫の代わりに出廷したことを確認できたので、訂正しお詫びする」と謝罪し、前日の答弁の誤りを認めた。
升田議員は南スーダンPKOに派遣している陸上自衛隊の施設部隊を5月末をめどに撤収させる方針を決めたことに関しても質問した。升田議員は「民進党はかねてから撤収を政府に求めてきた」として、その理由として(1)派遣決定当初とはマンデートが変更され、本来想定されている任務では対応が困難なこと(2)現地の厳しい治安情勢がさらに流動化していると考えられること(3)いわいる日報の隠ぺい問題などに見られるように、シビリアンコントロールが十分機能していない状態での任務継続は重大なリスクがあること――の3点を列挙。「以上のことをふまえ、政治の責任として自衛隊員の生命を守るためにも、撤収すべきであると求めてきた。よって、今回の撤収は、当然の決断」との認識を示した。
そのうえで、安倍総理が撤収の理由として「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当する施設整備は一定の区切りをつけることができると判断した」と述べていることに対しては、「本音は『PKO6原則目』と言われている現地の治安情勢に問題が生じ、自衛隊員が安全で有意義な活動ができなくなっている、このことが撤収の本当の理由ではないか」と疑問を表明した。また、撤収決断のタイミングについて菅官房長官が記者会見で「5年という節目を見据えて、昨年9月ごろから検討してきた」と語ったが、その翌月の10月8日には稲田防衛大臣は南スーダンのジュバを訪問し、駆け付け警護の任務付与の判断などのため、現地の治安情勢を視察していること、そして11月には駆けつけ警護の新任務の付与まで行っていることなどを踏まえて、「駆けつけ警護の任務付与から約4カ月での撤収決定は安保関連法の実績づくりのため、『派遣ありき』が前提だったのではないかとの疑念が残る」と指摘した。
議題となった物品役務総合提供協定については、今回の日英、日豪ACSA協定は、訓練、PKO、国際救援活動、大規模災害対処、自国民保護・輸送、その他、日常的な活動での物品役務の提供が対象であると明記されているが、武力攻撃事態、存立危機事態、重要影響事態、共同対処事態での物品役務提供が明記されていないことについて「これらの事態での物品役務提供は協定の対象外ということでいいのか」として、説明を求めた。安倍総理は「日英、日豪ACSAについてはそれぞれの国の法令により物品又は役務の提供が認められる活動を適用範囲とする旨が規定されている。この条項の下で武力攻撃事態、存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態についても物品役務の提供が適用対象となる。存立危機事態に該当する事態についてはその個別具体的な状況に即して政府がすべての情報を総合して判断することになるため、一概に述べることは困難」だとした。