衆院予算委員会で8日に行われた2015年度補正予算の基本的質疑では、「民主・維新・無所属クラブ」の先陣を切って枝野幸男幹事長が質問に立った。枝野幹事長は(1)臨時国会を召集しなかったこと(2)現下の経済状況と安倍政権3年間の経済状況(3)年金生活者等への臨時給付金(4)軽減税率の効果、恩恵を受ける対象、新聞が対象とされること――などについて安倍総理らの認識をただした。

(1)臨時国会を召集しなかったことについて

 憲法に基づく野党の要求にも関わらず臨時国会を開会しなかったことについて安倍総理が「召集の次期は内閣にゆだねられており、合理的な期間内に通常国会が開かれれば、臨時会を開かなくても憲法違反ではない」などと恣意的な憲法解釈で正当化していることについて、枝野幹事長は「われわれが開会を要求したのは10月だ。それから2カ月を超えているのに『合理的な期間内』と言えるのか」「『法の支配』を強調する安倍総理自身が、法の支配をまったく理解していない」と断じた。

(2)現下の経済状況と安倍政権3年間の経済状況について

 現下の経済状況については、安倍総理の「もはやデフレではない」との発言とは裏腹に、昨年来、消費者物価指数(消費税増税の影響を除いたもの)はゼロ近傍にあること(パネル資料1)、雇用では非正規雇用の増加が著しく、また実質賃金は民主党政権時より下がっていること(パネル資料2)などを示し、安倍総理が胸を張れる状況ではないことを指摘した。

 また、法人税率の引き下げについて、法人税は、賃金や設備投資を引いた後の利益にかかるものであることから、引き下げが賃上げに直接結びつくものではないことを指摘し、「むしろ設備投資減税を大胆にやるべき。設備投資減税を縮小して、法人税引き下げを行うのは方向性が全く逆だ」と批判した。

パネル資料1

パネル資料1

パネル資料2

パネル資料2

(3)年金生活者等への臨時給付金

 5日の本会議での代表質問の際に、岡田代表が1人あたり3万円の臨時給付金について「バラマキの象徴だ」と批判したところ、安倍総理が「一昨年の総選挙の際にこれを『やるべき』と言ったのは海江田前代表だ」と反論する一幕があった。これについて枝野幹事長は、「海江田前代表は、低年金者に制度として恒常的に給付金を付加することを『やるべきだ』と言ったのだ」と解説し、「誹謗中傷だ」と反論した。その上で「5年、10年先の将来にわたって老後の安心感を作るのが社会保障の目的であり、1回限りのバラマキとは本質的に違う」と安倍総理の認識の誤りを指摘した。

 また、この給付金の意義を「アベノミクスの恩恵が及びにくい人々の消費を支えるもの」としながら、支給対象を市町村税非課税世帯の高齢者に限定し、子育て世帯臨時特例給付金を廃止したことは、説明がつかないと指摘した。

予算委員会で枝野幹事長がただす

(4)軽減税率の効果、恩恵を受ける対象、新聞が対象とされること

 枝野幹事長は軽減税率を「据え置き税率」と表現し、これが低所得者対策とはいえないことを2つの資料で示した。1つは軽減税率による負担軽減額(年額)が、年収200万円未満の世帯が受ける恩恵は約8000円である一方、年収1500万円以上の世帯では約18000円となり、高所得者ほどより大きな恩恵を受けること(パネル資料3)、もう1つは軽減税率のために使われる1兆円の財源のうち、年収300万円未満の世帯の負担軽減に使われるのは500億円程度で全体の11%に過ぎないこと(パネル資料4)を明らかにした。
 さらに新聞を軽減税率の対象としたことについて、電気やガスといった公共料金や、冬の北国の灯油代、公共交通機関が乏しい地域での車のガソリン代など、生活必需品はほかにもあることを上げ、「残念ながら若い人たちを中心に、低所得者の皆さんは新聞を取る余裕もない。そういう状況の中でなぜ恣意的に新聞だけが対象になっているのか」と問題提起した。

パネル資料3

パネル資料3

パネル資料4

パネル資料4

国民の皆さんへのメッセージ

 枝野幹事長は、民主党政権(3年3カ月)では実質GDPは5.7%伸びたのに対し、安倍政権(2.9か月)では2.4%にとどまっていることなどを示し(パネル資料5)、「安倍総理の、都合のいい数字だけを並べる言葉に惑わされるのを止めよう。多く国民の皆さんが感じている生活実感は間違っていない。そろそろ実態を踏まえて、しっかりとした評価をしてほしい」と国民の皆さんにメッセージを送り、質問を締めくくった。

パネル資料5

パネル資料5