衆院予算委員会で12日、2015年度補正予算の基本的質疑が行われ、「民主・維新・無所属クラブ」の3番手として質疑に立った緒方林太郎議員は、(1)北朝鮮情勢(2)慰安婦問題に関する日韓合意――を取り上げ、政府の認識をただした。
慰安婦問題に関する日韓合意をめぐっては、「安倍内閣総理大臣は日本の内閣総理大臣として、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒し難い傷を負われた全ての方々に対し、心からお詫びと反省の気持ちを表明する」とする岸田外務大臣の声明に触れ、「このことを安倍総理本人から聞いたことはない。一度対外的にご自身の言葉で言うべきではないか」と迫った。安倍総理は「すでに私は朴槿恵(パククネ)大統領に申し上げている。今後求められればどこでも言うということになれば最終的、不可逆的に終わったことにはならない」「私の朴大統領への発言も含めて今回の合意は国際社会が高く評価している」などと強弁。緒方議員は「一度くらい自分の言葉で発言しないと最終的に不可逆的に解決する意思があるのかどうかが不透明になる。いろいろなバランスのもとにできている合意文書にあって、安倍総理が(謝罪の部分について)発言しないことで余計なケチがつくことを危惧している」と指摘したが安倍総理は発言を拒否、対外的に発言する意思がないことが明らかになった。
緒方議員はそのうえで、日韓合意のなかで日本政府が全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置として具体的に、「韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これを日本政府の予算で一括で拠出し、日韓政府が協力し、全ての元慰安婦の方の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする」とあることについて、この措置が「慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」前提である一方、在韓国日本大使館の慰安婦像の撤去については「最終的かつ不可逆的に解決される」ための条件になっていないと問題視。「日本政府は、慰安婦像の撤去がない限り予算の拠出はしないのか」「最終的かつ不可逆的に解決されたと確認した後も、慰安婦像の撤去については努力してますと続くのではないかと懸念している」とその前後関係をただしたが、岸田外務大臣は「それぞれが合意の中身を誠実に履行するというのが合意の全て」、安倍総理も「お互いに誠実に実行していくことによって最終的、不可逆的に解決されていくことになると確信している」と言及を避けた。
また、日韓合意では国際社会で慰安婦問題での非難や批判を控えることで一致していることから、慰安婦問題の関連資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請手続きをすることがこの「非難や批判」に当たらない可能性があると考えるかと質問。岸田外務大臣は「合意に基づき適切に対応するものと考えている」と答えるにとどまった。緒方議員は、合意文書の主語は韓国政府であるため民間団体が世界記憶遺産に登録申請することまで縛れないと懸念を表明した。