衆院予算委員会で5日、2016年度予算に対する基本的質疑に黒岩宇洋議員が立ち、安倍政権の経済政策、TPP問題について質問した。
黒岩議員は冒頭、「スイスは世界の中でも1、2を争う物価が高い国だが、同時に最低賃金も高い国だ。物価が高くても、それ以上に賃金が高ければ豊かさを実感し、経済は成長していく」「この20年、米、英、独は物価、賃金、経済成長がおしなべて上昇しているが、200カ国ある国の中で、物価も上がらないが賃金も上がらない、そして経済成長もしていない国はわが国だけだ」と、異常な状況にあることを指摘した。
アベノミクスについて、「3年経ったが、地方は特に実感が感じられないという。なぜ地方で実感できないのか」との質問に安倍総理は、「受け取り方はそれぞれだ。たまたまそういう声を聞いただけ。倒産件数が減少したり、求人倍率が上がっている県もある」などと都合のいい数字を上げて強弁した。黒岩議員は、「多くの首長がまったく実感がないと言っている。大企業だけではなく中小企業にも予算を振り分けていかなくてはならない。個人消費がGDPの6割を支えているわけだから、その可処分所得を上げていく政策に転換していくことが、地方の景気を良くすることになる」と指摘した。
TPPの効果について黒岩議員は、「試算をしていないということだが、本来であれば、合意する前に試算してメリット・デメリットがあるのかを計算するのが当たり前。署名してから試算するといういい加減なものなのか」「大筋合意で昨日署名した。試算を示すことによって何に影響が出るというのか。署名した後なら試算を出せるはずだ」と厳しく追及した。安倍総理は、「農産品については試算はある」と述べたが、「試算を外に出すと交渉に影響がある」「全体で見ることが大切だ」「工業製品の99%の関税は撤廃される」「ブランド化を進めていく」など、その後は質問と関係ない答弁を繰り返した。
重要5項目の一つであるコメについて黒岩議員は、「農家には、最終的には7.84万トンの無税枠が決められ、米価が下がるのではとの不安がある」と指摘し、政府が「SBS方式(輸入業者と卸売業者がペアとなり、売買価格を相談して決めた上で、同時に入札する制度)で販売し、輸入増分は備蓄米にする」としていることについても、具体的な方法は何も決まっていないと批判した。
「どう手当てするかも決まっていない中で政府は、『米価は変わらない。生産額も変わらない。コメには影響はない』としているが、それで農家の皆さんが分かりましたと言うわけがない。肝心なところは分からないまま、結論は政府に都合のいいものが出ている。工業製品だろうが何だろうが試算もなく、明確な根拠はないが結論の数字だけは政府に都合のいいことになっている。これがTPPの姿だ。農家の不安はさらに揺るぎのない大きなものになった」と声を大にして訴えた。