衆院予算委員会で15日、経済・地方創生等をテーマに集中審議が行われ、山尾志桜里議員が民主党の5番手として質疑に立ち、放送法4条と憲法21条との関係について報道の自由やメディア規制の観点から安倍総理らの見解をただした。

政治的公平性について(政府統一見解)より

 山尾議員は高市総務大臣が1つの番組でも政治的公平性を欠く放送をしたと政府が判断する放送局に電波の停止を命じる可能性があることを繰り返し答弁していることをめぐって、政府が提出した統一見解を取り上げて質問した。高市大臣は局へ電波の停止を命じる可能性に関連して、「選挙期間中に特定の候補者のみを相当の時間取り上げる特別番組を放送した場合」などを例に挙げ、「1つの番組でも認められない場合がある」と述べている。山尾議員は高市総務大臣のこの間の発言について「報道を萎縮させ、国民の知る権利を害し、憲法21条に違反しているのではないかという深刻な問題が提起されている」と指摘した。

 山尾議員は、「1つの番組でも認められない場合がある」とした高市総務大臣と「放送事業者の番組全体を見て判断する」と従来の政府見解を述べる安倍総理との答弁の不一致を整理するために求めた統一見解だったが、「あろうことか高市大臣の見解に揃えてきた」ことを驚きを持って受け止めたと述べ、「第1次安倍政権を含め、これまでどの政権でも『1つの番組でも判断し得る』という強権的な拡大解釈を示した政権はない」と指摘。解釈を変えた理由を総理にただしたが、安倍総理は「従来から番組全体を見て判断するとしてきた。何ら変更はない」などと述べ、高市総務大臣の答弁について「どういう状況になれば放送法が適用されるという、一般論的な話をした」「番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、番組全体を見て判断する際に一つひとつの番組を見て全体を判断することになるのは当然のこと」などと擁護した。

 山尾議員は「高市大臣が答弁した通り」とする安倍総理の答弁を、「大幅な拡大解釈で、憲法21条の表現の自由との抵触度合いをさらに強めるものだ」と断じた。

 憲法21条の表現の自由に関する安倍総理の認識を確認するために「表現の自由の優越的地位」について山尾議員は質問したが、安倍総理は次々に事務方の答弁補助を受けながらも支離滅裂な答弁しかできないまま最後には「こうした予算委員会の場で私にクイズのように聞くこと自体が意味がない」と開き直る始末だった。山尾議員は「経済的自由はたいへん重要な権利だが、国がおかしいことをすれば選挙を通じて直すことができる。でも、精神的自由、特に内心の自由はそもそも選挙の前提となる国民の知る権利が阻害されるから、選挙で直すことができないから優越的な地位にある。これは憲法で最初に習う基本だ」と安倍総理に説明。「それも知らずに言論の自由を最も大切にする安倍政権だなどと胸を張るのはやめていただきたい」と苦言を呈した。

PDF「20160215山尾志桜里議員配布資料」20160215山尾志桜里議員配布資料

放送法4条と憲法21条との関係について安倍総理らの見解をただす山尾議員

放送法4条と憲法21条との関係について安倍総理らの見解をただす山尾議員