参院予算委員会で7日、経済・財政等に関する集中審議が行われ、質問に立った藤末健三議員は、(1)憲法(2)雇用問題・景気対策(3)教育問題――について、安倍総理ら政府の見解をただした。

藤末議員 資料1

藤末議員 資料1

 憲法改正については、安倍総理の「在任中に成し遂げたい」との発言を受け、報道各社の世論調査で「9条は変えない方が良い」との回答が約6割に達したことにも触れ、「平和憲法の根本である憲法9条と前文は変えるべきではないと確信している」と強調。「憲法9条の改正に対する国民的な理解は深まっていないとの現状認識に変化はないか」とあらためて尋ねたところ、安倍総理は「まだまだ国民的な理解、支持が広がっている状況ではないと認識している」と答えた。

 藤末議員は、平和憲法の前文にある「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する」ことを実現するのが日本の大きな外交政策の柱だと主張。その推進とともに、平和の理念を実現するために全世界の国民にとって恐怖となる核廃絶に向けた取り組みを加速するよう求めた。

 経済政策をめぐっては、2014年12月にOECD(経済協力開発機構)が公表した「所得格差の拡大は能力の発揮を阻害し、経済成長の足を引っ張る」とする報告書にも触れ、民主党の共生社会創造本部が掲げる「雇用」「男女」「教育」などの「格差」の壁を打ち破ることが必要だと指摘。なかでも、生活保護世帯の子どもの4人に1人は、大人になると自分も生活保護を受給しているなど「貧困の世代間連鎖」を問題視し、これを打ち破るためにも雇用と教育が重要だと述べた。

藤末議員 資料2

藤末議員 資料2

 そのうえで、わが国が目指すべき経済成長戦略の方向性として、介護や医療、保育・教育といった公的サービスを含めたサービス産業は就業人口が多く、高齢化への対応、女性の社会での活躍の推進、貧困の連鎖の解消のためにも非常にニーズが高いことから、社会的ニーズに応え公的サービス分野の支出を増やすことは、1人当たりの可処分所得を増やし内需を下支えする経済対策にもなると説いた。

藤末議員 資料3

藤末議員 資料3

 あわせて、社会保障分野の雇用誘発効果は他の産業に比べて高いとして、社会的ニーズが高く、高い雇用誘発効果を期待できる社会保障分野に公的支出を増やし、雇用拡大、所得の拡大を図ることが経済成長戦略には重要だと指摘。特に、公的支出を増やすことで厳しい環境にある介護や保育などに携わる人たちの処遇改善が必要だと訴えた。

 これに対し安倍総理は「大変参考になるご指摘。われわれもサービス分野を重視しており、サービス分野の生産性の向上、それによる働いている方々の所得の向上を図っていきたい」などと述べ、社会保障分野を戦略的に産業として育成していく意義に賛同した。

藤末議員 資料4

藤末議員 資料4

 藤末議員は教育について、自身が奨学金を3つ受けて国立大学を卒業した経験からも、「子どもが家庭の経済事情に左右されて学べなくなることは、絶対にあってはならない」と述べ、そのためには奨学金制度の充実が不可欠だと主張。民主党政権時代には奨学金を2割増やしたものの、OECD加盟国30カ国中大学の授業料が無料になっているのが15カ国、給付型奨学金がないのは日本とアイスランドだけで、アイスランドの授業料は日本の約1割だとして、奨学金返済に苦しんでいる人が大勢いるなか、給付型の奨学金の創設を求めた。

 藤末議員は加えて、貧困家庭への学習支援の重要性も述べ、公共施設の使用料の減免や放課後の教室の提供、文科省のみならず貧困対策を所管する内閣府や厚生労働省と連携しながらこうした先行事例のノウハウの蓄積、共有といった「低負担で利用できるボランティア中心の学習塾への支援」を要望。関連して、「お金がないから自分は進学できない」と、はじめからあきらめている子どもが多い現状があるとして、あらゆる奨学金制度や大学授業料免除制度といった支援情報を一括して集め、ワンストップで直接窓口相談ができるようにするとともに、情報提供のみならず貧困家庭から進学したなどの好事例や経験談を伝えて欲しいと求めた。

 馳文科大臣は、「ご指摘の通り、小学校中学年、中学校に入ると自分の家庭環境、経済環境で大学進学できるかどうかをあきらめざるを得ない子どもたちがたくさんいるのではないかというのは想定の範囲内」だと認め、前向きに検討する考えを示した。

 藤末議員は、「教育は国の基盤。いま日本に一番必要なのは希望ではないか。きちんと頑張れば必ずみんな学ぶことができる。きちんと頑張れば必ず十分な給料をもらい、安定して笑顔で働くことができる。一人ひとりの能力を発揮し、夢と希望を実現できる社会が必要であり、その社会の基盤はやはり平和だ」と強調した。

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