参院本会議で9日午前、政府提出の「所得税法等の一部を改正する法律案(所得税法等改正案)」の質疑が行われ、尾立源幸議員が質問に立ち、(1)アベノミクス(2)軽減税率(3)給付付き税額控除(4)国税庁定員(5)租税特別措置透明化法――等に関して安倍総理らに質問した。

 所得税法等改正案は消費税の軽減税率の導入、法人税率の引き下げ及び欠損金の繰越控除の見直し等、地方法人税の税率の見直し等を行うもの。軽減税率導入は格差是正効果に乏しく、事業者のコスト高が見込まれ、現場の混乱も避けられず財源の手当てもないのが実態である。

 尾立議員は、アベノミクスについては3月2日の参院予算委員会で安倍総理が「アベノミクスが失敗だという指摘はあたらない」と答弁したことを踏まえて質問。この答弁で、昨年の正規雇用者が一昨年よりも26万人増えた旨の発言をしたことに関し、尾立議員は、民主党政権最後の年である2012年の3340万人と比べて、安倍政権下で36万人減少しているのが実態だと反論。「総理は『雇用は100万人以上増えた』と発言しているが、増えている労働者の多くは非正規労働者であり、正規労働者は減少している」と指摘し、労働法制改悪により非正規で働く不安定な労働者が増えたことに胸を張る安倍内閣の姿勢に疑問を呈した。

 また、円安やGPIF・日銀の支えによる株高、法人税減税によって一部企業の業績が上がり、内部留保が積み上がる一方、円安の進行により輸入物価が値上がりしているのに実質賃金は増えずに4年連続対前年マイナスとなり、国民の財布は痛めつけられていると指摘。「GDPの6割を占める個人消費が十分に伸びないから実質GDPも十分に上がらない構造だ。アベノミクスがうまくいっているとは言えない」と断じた。

 そのうえで政府の15年度の実質成長率の見込みと、それを達成するのにこの1-3月期で前期比と年率で何%程度の伸びが必要かとただすと、安倍総理は「実質GDP成長率は政府経済見通しで1.2%程度、これを達成するためには本年1-3月期に前期比1.9%、年率換算で7.7%の成長が必要だ」と述べ、その実現に向けて「あらゆる施策を総動員していく」などと根拠もなく答弁した。

 消費税の軽減税率については、「自公の選挙対策」「安倍政権が犯そうとしている大罪」などと尾立議員は厳しく批判。1兆円もの財源を使って、年収300万円未満の世帯が受けられる恩典は1100億円に過ぎないのに対し、年収1千万円以上の高所得者には1400億円もの恩典があるとして、「逆進性対策ではなく金持ち優遇だ」と断じた。また、(1)軽減税率で生じる税収不足をカバーするためには標準税率を高く設定しなければならない(2)中小企業にとっては事務手続きが煩雑になる(3)対象品目の線引きも困難で新たな利権を生じさせる恐れがある――などの問題点を列挙。軽減税率ではなく、民主党などが求める、消費税の払戻しである給付付き税額控除の導入こそが真の逆進性対策となると主張した。

尾立源幸議員が質問

 さらに、安倍政権が軽減税率の財源として社会保障財源を充てようとする動きもあると指摘し、「社会保障財源に1兆円もの穴が開く。大きな財源不足で、社会保障をどうするのか、社会保障の充実を成し遂げる気がないのか」と問うと、安倍総理は「社会保障財源は確保する」と強弁した。

 尾立議員は、消費税率引き上げの前提として、2012年11月に党首討論の場で安倍総理が野田前総理と約束した国会議員の定数削減についても質問。安倍総理は「各党各会派が調査会の方針を尊重し真摯(しんし)に議論を行い、早期に結論を得ることで国民の付託に応えていくべき」などと述べるだけで、自民党総裁としてのリーダーシップを発揮する姿勢は見せなかった。