参院予算委員会で18日に行われた外交・安全保障に関する集中審議で、民主党・新緑風会の2番手として質問に立った有田芳生議員は、(1)日朝交渉の課題と拉致問題の原点(2)人権大国・日本の構築のために――を主な質問内容として、安倍総理らをただした。

 拉致問題について有田議員は、「2014年にモンゴルで横田滋さん、早紀江さん夫妻が、孫娘のキム・ウンギョンさんと初めて面会した。早紀江さんは、『緊張感ある、でも楽しい時間を過ごさせてもらった』『つらい、苦しい、暗いトンネルを歩いてきた37年で、一番うれしい出会いだ』とも言っていた。横田さん夫妻も高齢となっている。拉致対策本部として拉致問題は絶対解決しなくてはならないが、両者の再会に向けては人道問題として今後の対応に結び付けてほしい」と訴えた。

 77年の宇出津事件について有田議員は、「事件発生前に当時の警察庁は石川県警に対して警告を発し、石川県警も警戒をしていたが久米さんは拉致されてしまった。この事件がもっと大きく取り扱われていれば、その後の松本京子さん、横田めぐみさんの拉致事件は果たしてあったのであろうか。石川県警は事件後に200ページに及ぶ総括を行った。今からでも総括を行うべきだ」として、安倍総理に見解を求めた。それに対して安倍総理は、「拉致問題を考える上で1977年は重要な年。宇出津事件をはじめとする拉致事件については、これまでも関係者からの聴取や鑑定等捜査を行ってきた。今後も事件の全容解明に向け捜査に全力を上げていくものと承知している。当時は政府も含め、拉致が北朝鮮により組織的に行われているという認識がなかった結果と思う。拉致問題解決に向け全力を尽くさなければと考えている」と答えた。

日朝交渉の課題と拉致問題の原点等を追及する有田議員

日朝交渉の課題と拉致問題等を追及する有田議員

 拉致問題解決について有田議員は、「いずれ日朝交渉は再開しなければならないと考えているが、ストックホルム合意には大きな欠陥があったのではないか。それは、日朝間で、拉致問題の解決とは何かという共通理解がないことだ。今後交渉していく時にはそうしたところも明確にしながら進めてほしい。蓮池薫さんは、『いずれ対話ムードが生まれた時に、向こうが乗ってこられるよう、非軍事の積極的な支援策も提示しておくべき」と発言している。日朝交渉を前に進めて、拉致問題を解決していただきたい。われわれも協力していく」と述べた。

 ヘイトスピーチ問題を取り上げた有田議員は、「英国外務省のウェブサイトでは何年も前から、『日本は民主的な国だが、時々排外主義的なデモがある。それを見た時には急ぎその場から立ち去るように』と出ている。13年2月17日に東京の新大久保で行われたヘイトスピーチデモでは、『仇ナス敵ハ皆殺シ』『朝鮮人ハ皆殺シ』『朝鮮人、首吊レ、毒飲メ、飛ビ降リロ』などのプラカードやナチスの鉤十字を掲げてヘイトスピーチデモを行っていた。08年から11年にかけて朝鮮大学前で3回に渡り在特会の会長(当時)が街宣で「殺してやるから出てこい」などとスピーチし、今だにネット上で流れている。こんなことが許されるのか」と、安倍総理に考えを示すよう求めた。安倍総理は、「一部の国、民族や文化を排除しようとしたり、憎悪を煽るような過激な言動は極めて残念であり、決してあってはならないと強く感じた。日本国民、日本国の品格に関わることであろうと思う。政府としては、一人ひとりの人権が尊重される豊かで安心できる社会を実現するための対策を講じていきたい」と答えた。

 有田議員は、「この在特会会長(当時)に法務省は、『今後決して同様の行為を行うことがないように』という勧告をしたが、その勧告文を破り、今だにヘイトスピーチを行っている。法務大臣も含めた法務省の権威はどうなるのか。人権侵害とは特定の者の人権を具体的に侵害する行為であり、このようなヘイトスピーチは現行法上では対処できない。また、サミット時にこのようなヘイトスピーチデモが行われた場合、日本に対する重大な問題だ」として、安倍総理の考えを求めた。安倍総理は、「社会全体での各種啓発活動で差別解消に努めているところ。サミット時に排外主義的な行為が行われ、人権が重んじられていないという印象を持たれては大変なこと。今後一人ひとりの人権が尊重される社会実現のために、教育や啓発に全力をあげる」と答えた。

 有田議員は、「全国約300の地方自治体が、ヘイトスピーチに対処するために国が対処して欲しいとしている。与野党通じて法整備を考えている。日本が人権を大切にする国であるということを形にするために、差別を撤廃する宣言を国がするべきだ」と指摘した。