岡田克也代表は20日北海道を訪れ、TPP合意の影響について、道内各地の酪農家、農家からのヒアリング・視察を行った。今夏の参院選挙で当選した鉢呂吉雄参院議員が同行し、各地でのヒアリングでは、衆院北海道5区の池田真紀公認内定候補者、同北海道10区の神谷裕公認内定候補者、衆院北海道4区の本多平直公認内定候補者が同席した(上の写真は江別市で米村牧場を視察する様子。池田真紀公認内定候補者も同行して話を聞いた)。
一行はまず、江別市で米村牧場を視察。米村牧場は2006年、スイスやオランダなど本場のチーズづくりの現場での研修を積み重ね、チーズの製造・販売を行う「チーズ工房プラッツ」を開設。早朝搾った牛乳を工房でその日のうちにチーズに加工、5カ月から30カ月じっくり熟成を行うことで、独特の風味豊かなチーズを作り上げている。各製品は新千歳空港などでも販売され、高い売上を上げており、特に「江別プレーンチーズ」は、JAL国際線のファーストクラスで提供され、高い評価を得た。ヒアリングでは、代表の米村常光氏や長男の光喜氏から、「(TPPの合意内容は)こんなに譲歩していたのか」「(TPPが発効すれば)これから苦しくなる不安はある」「農政はどこを向いてやっているのか、規模の拡大ばかりを続けて食の安全は守られるのか」「牛の品種改良なども効率性ばかりを重視していて、限界が来ているのではないか」など、さまざまな不安の声が多く寄せられた。
岩見沢市では、米農家の武田貞行氏からヒアリングを行った。ヒアリングには、武田氏が書記長を務める空知農民連合の井向委員長など役員も同席した。出席者からはTPPについて、「輸出という話もあるが、まずは国内で余っているものをどうするかだ」との問題提起があり、「SBS方式で輸入された米と同量の国産米を備蓄米として買い入れるので、国産米の価格に変更はないと言うが、SBS米に国産米の価格が引きずられることは明らかだ」「自分の米が備蓄用になり、輸入米が主食用になるというのは道理が合わない。」、「(小麦などの合意内容が発効すれば)輪作体系が崩れるのではないかと心配している」といった不安の声が聞かれた。最後に武田氏からは、「水田を守るということは国を守るということだ。そのような点から、1次産業を位置づけて欲しい」との強い想いが語られた。
岩見沢市でのヒアリング後、岡田代表は記者団の取材に応じ、TPPについて、「心配している声が多い。農家の声を国会に届けていきたい」「本当に今の状況で発効するのか。発効できないのであれば議論する必要があるのか。そういうことを含めて次の国会で議論するべき」と、次の国会での論戦に向けた意気込みを語った。
最後に一行は、ニセコ町で高橋牧場を視察。高橋牧場は、現在の代表を務める高橋守氏が畑作を中心に乳牛を飼う複合農家から酪農専業に転換。1997年にはアイスクリーム、その後、ヨーグルトやロールケーキの販売も行い、2011年には地元野菜を提供するレストラン、本年中にはチーズ工房のオープンも予定されている。
牧場に隣接するミルク工房には、新鮮な牛乳で製造されたソフトクリームやシュークリームを求めて、年間35万人以上が訪れるニセコ町の人気観光スポットとなっている。ヒアリングでは、ニセコ町議会議長も務める代表の高橋守氏、長女でミルク工房の責任者を務める高井裕子氏から、「(TPPで)いろんなダメージが出てくるとは思う。それでも農家をやめるわけにはいかない」「輸入品が増えていく中で、安全な食品を購入できるよう情報提供が欲しい」「なかなか子どもを預けられず働けない方が多い。観光地では土日の勤務も多く、保育施設の整備も進めて欲しい」などの声が聞かれた。