衆院本会議が14日午後10時から開かれ、民進党など野党4党(民進、共産、自由、社民)が提出した内閣不信任決議案が否決されたのち、カジノ法案が与党などの賛成多数で可決、成立した(写真上はカジノ法案の反対討論に立った金子恵美議員)。
安倍内閣不信任決議案
内閣不信任決議案は枝野幸男議員が趣旨説明、近藤昭一議員が賛成討論を行った。枝野議員は趣旨説明の中で、「今国会で審議されたTPPと関連法案、年金カット法案、カジノ法案。無理筋の3点セットと言わざるを得ない。しかもこれらの重要法案のすべてが、十分な審議時間も取らず、強引な国会運営で採決された」と指摘。「しかも安倍総理は国会で、『何時間審議しても同じ』と答弁した。国会の存在意義は、最終的な多数決だけではない。議会での議論を通じて、主権者である国民に争点を伝えることも大切な議会の機能だ。政府の姿勢は『由らしむべし、知らしむべからず』であり、それだけでも内閣不信任にあたる」と迫った。
そして、「世界は、TPP発効を前提としない新たな経済連携に向けた動きを模索し始めている。安倍総理は国内でも反対の多いTPPに突き進んでおり、国際的な潮流から日本だけが遊離する状況を作り出した。今議論しなければならないのは、TPPが発効しない場合の対策だ。安倍総理の見識が疑われる」と指摘した。
年金カット法案については、「年金は、老後の生活を支える最後の柱だ。年金のルールを変更することは、現在の年金受給者だけではなく、将来世代の老後設計にも多大な影響を与える。今回の審議では正確な答弁がなく、採決が強行された。いいかげんな審議で多くの国民に影響を与える年金改悪を強行することは、到底容認できない」と批判した。
カジノ法案については、「賭博であるカジノを、どうして違法性阻却できるのかいう問題だ。目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止などについてそれぞれ十分な検証が必要だ」とし、「何の説明もなされていない」と追及した。
そして「カジノの推進や年金カット、発効のめどがないTPPよりも、優先して議論しなければならない課題が山積しているが、解決にはまったく至っていない。(安倍総理が推進した政策は)経済再生につながるどころか、経済失速を加速させるとともに、本来の美しい日本を安倍総理自らぶち壊すことになる。安倍政権のおごりたかぶった姿勢は、断じて容認できない。国民生活を守るため、安倍政権を不信任する」と訴えた。
近藤議員は賛成討論で、「日本は世界第3位の経済大国でありながら、なぜ、これほど多くの人が苦しみ、将来への不安を感じているのだろうか。安倍政権はこうした人たちを置き去りにしたまま、経済的な格差を拡大させ、アベノミクスのエンジンをふかし続けている」と批判し、「将来に対する不安は増すばかりだ」と追及した。
そして、「安倍総理は、何を成し遂げようとしているのか。少なくとも国民の暮らしがよくなる気配はまったくない。政権維持と、安倍総理の自己満足を満たす案件が優先され、国民本位の政策が後回しになっている」と指摘し、「安倍内閣の横暴をこれ以上許さず、国民の暮らしを守るため、全ての議員の良心に訴え、不信任決議案にご賛同いただきたい」と議場に呼びかけた
本会議の冒頭では、国会会期の17日までの再延長が諮られ、本村賢太郎議員が反対の討論を行った。
本村議員は、「政府・与党は、会期延長幅を大きく見誤った上に、強引な国会運営を続けた。政府・与党は自らの身勝手な姿勢を猛省し、今国会の再延長をあきらめ、カジノ法案を廃案とすべきだ」と指摘し、「今国会における政府与党幹部の暴言失言は枚挙にいとまがない。言論の府である国会で審議を軽んじる発言が続くのを、もはや許すことはできない」と批判し、「カジノ法案審議のための会期延長には、国民の理解が得られない」と国会再延長に反対した。
最後に、参院で修正議決されたため衆院に回付された「カジノ法案」が議題となり、金子恵美議員が反対の討論を行った。
金子議員は、「主な論点(1)法案の賭博性の違法性阻却のための確認が不十分(2)入場料と納付金の規定が「徴収することができる」という「できる規定」になっている(3)カジノによる経済効果が公平な論点からされていない(4)マネー・ロンダリング対策が充分でない(5)カジノ施設周辺の治安対策をどうするのか(6)ギャンブル依存症対策をどう実施するか――等々、問題点を徹底的に議論することが国会に与えられた使命だ」と指摘し、「これらの問題点が解決されないまま、カジノ法案が成立することは、絶対にあってはならない」と訴えた。
内閣不信任決議案は与党等の反対多数で否決、会期延長は与党等の賛成多数で可決、「カジノ法案」の修正回付案は与党等の賛成多数で可決された。