民進党男女共同参画推進本部長
神本美恵子

 本日、少子化対策として、社会全体で結婚支援を推し進めるため、内閣府が設置した「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」が提言を取りまとめ、発表した。

 「結婚」や「家族」に関しては、さまざまな価値観がある。未婚・非婚の理由も、不安定な雇用や低賃金といった経済的事情の他、適当な相手にめぐりあわない、家族や身体的な事情がある、多様な性的指向・性自認等、人それぞれである。

そのような当事者を置き去りにしたまま、「結婚は必ずした方が良い」「結婚して一人前」といった価値観で、結婚を推進する施策を押し付けることは、国によるハラスメント以外の何物でもない。2014年の東京都議会で、自民党所属男性議員から発せられた「早く結婚した方がいい」「子どもを産めないのか」との不規則発言は、国際的にも強い批判を浴びた。その反省が政府には全く見られない。

 自治体が現在、進めている結婚支援事業にも問題が多い。検討会で紹介された事例では、「企業内で独身者の世話焼きを行う婚活メンターの育成、スキルアップ」や、「職場内で結婚支援についての声掛け」といった官民協働による結婚支援の取組がすでに実施されている。職場で私的なことに過度に立ち入ることは、厚生労働省が定める「職場のパワー・ハラスメント」の行為類型「個の侵害」に該当する。

 結婚支援に関する反応は、都市部と地方で大きな認識のギャップがあるとの意見もあるが、人権の侵害に都市部も地方も無い。加えて、自治体が税金を使って行う結婚支援事業は、何かやっているとの実績づくりにはなるが、効果の検証が行われているかも疑わしい。

 結婚の希望が叶えられる環境整備とは、長時間労働の是正や非正規雇用労働者の処遇改善、手厚い子育て支援など、多様な働き方を認め、希望する人が安心して産み育てられる環境を整備することに他ならない。政府は、最初に結婚ありきで「産めよ殖やせよ」と個人に迫るかのような姿勢を改め、ワーク・ライフ・バランスが実現する労働環境の改善に一刻も早く取り組むべきである。

以上