2016年度第3次補正予算及び2017年度当初予算の概要と、民進党の考え方について解説する。

2016年度第3次補正予算 税収が1・7兆円も不足、リーマンショック
以来7年ぶりに赤字国債を追加発行

 2016年度当初予算は、名目3・1%、実質1・7%もの経済成長率を前提に税収見積もりが行われた。しかしふたを開けてみれば、16年度の経済成長率は現時点での見込みで名目1・5%、実質1・3%にすぎない。そこで、政府は16年度第3次補正予算を編成して、税収を1兆7440億円も下方修正するとともに、その埋め合わせとしてリーマンショック以来7年ぶりに年度途中に赤字国債を追加発行せざるを得なくなった(資料1参照)。

2016年度第3次補正予算


 これは、いかに安倍政権が甘い見通しに立って経済財政を運営してきたかの証左である。また、安倍首相がいかに強弁しようとも、アベノミクスがうまくいっていない現実を反映している。
 なお、本補正予算には歳出の追加として、災害対策費1955億円、国際機関分担金及び拠出金等1685億円、自衛隊の安定的な運用態勢の確保等1706億円などが計上されている。

アベノミクスの失敗

 物価については、15年の生鮮食品を除く総合指数が対前年度比で0・5%上昇したものの、16年は0・3%のマイナスとなり、デフレ脱却とは程遠い状況である。総務省の家計調査によると、1世帯当たり1カ月間の支出の実質指数は15年を100とすると、旧民主党政権下では09年10~12月期は104・4、12年7~9月期104・2と、一貫して100を上回っていたが、安倍政権では、15年7~9月期に99・8を記録して以降、一貫して100を下回っており、16年7~9月期は97・0と、消費低迷が色濃く表れている。また、安倍政権下の実質経済成長率の平均は1・3%と、旧民主党政権の1・6%に及ばない。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は、旧民主党政権下の10年を100とすると、15年は94・6と5ポイント以上も低い。

2017年度当初予算 当初予算の一般会計総額は過去最大規模の97・5兆円

2017年度予算内訳


 17年度当初予算の一般会計総額は、前年度当初予算比7329億円増の97兆4547億円と過去最大規模を記録した。政府は本予算を「経済再生と財政健全化の両立を実現する予算」と称している。誰もが活躍できる「1億総活躍社会」の実現により成長と分配の好循環を強化し、経済財政に直結する取り組み、「働き方改革」を推進して経済を再生するという。また、社会保障関係費の伸びを夏の概算要求段階から圧縮して4997億円に抑え、国債発行額を前年度比622億円減とするなど、財政健全化に配慮していると主張している。
 しかし、政府の主張は妥当とは言えない。「1億総活躍社会」というが、保育士等、介護人材・福祉人材の処遇改善のための予算は544億円と小規模にとどまっている。また、給付型奨学金の創設をうたうが、17年度は対象を私立自宅外生で住民税非課税世帯などの要件を課して約2800人に絞るなど、極めて限定した形にすぎない。「働き方改革」についても、これまでの予算の延長線上にすぎず、新味はない。そのため、一般歳出の内訳を見ても、特殊要因を除けば、社会保障費と防衛費以外は、ほぼ前年度から増減がなく、メリハリを欠いた内容となっている(資料2参照)。

防衛費は過去最大、社会保障費はつじつま合わせ

 社会保障費と防衛費は前年度から大きく伸びた。防衛費は5年連続で過去最大を記録した。社会保障費については本来、給付と負担のバランスを踏まえた抜本改革の全体像を描いた上で歳出改革を行うべきである。にもかかわらず、とりあえず高齢化に伴う自然増が15年の「経済財政・再生計画」に記した5千億円の枠内に収まるよう、社会保障費を1400億円だけ圧縮してつじつま合わせをしたにすぎない。圧縮の具体策は、大企業従業員の介護保険料負担増443億円、高額療養費の自己負担増224億円、高額介護サービス費の自己負担増13億円、後期高齢者の保険料軽減特例の縮小187億円、入院時の光熱水費負担の自己負担増17億円、高額薬剤の薬価引き下げ196億円、協会けんぽへの補助削減321億円である。

再び甘い見通しに基づき税収増を見積もる

2017年度予算


 これまでの甘い見通しを反省することなく、17年度は名目2・5%、実質1・5%成長と楽観的な経済見通しに基づき、甘かった16年度当初予算の税収見積もりからさらに1080億円の税収増を見込んでいる。それだけでなく11年度以来6年ぶりに外国為替資金特別会計の剰余金を全額つぎ込み、その他収入を前年度比6871億円増の5兆3729億円も計上している。さらに国債の想定金利をこれまでより0・5%も引き下げ、国債費を前年度当初予算比836億円減の23兆5285億円に抑えた。そうした措置により、何とか国債発行額を34兆3698億円と前年度より622億円だけ引き下げる形に見せかけているというのが実情である(資料3参照)。

財政状況はさらに悪化

 そうした操作を行ったにもかかわらず、一般会計基礎的財政収支の赤字額は10兆8199億円から10兆8413億円へと悪化している。国・地方の長期債務残高も16年度末の1073兆円(実績見込み)から1093兆円に増大する見込みである。国際比較で見ると、17年の債務残高の対GDP比は米108・4%、英88・8%、独65・9%、仏97・8%、伊133・4%、加90・5%だが、日本は253・0%と突出して高く、財政は危機的状況にある。
 こうした放漫財政を支えているのは、日本銀行による異次元の金融緩和である。日本銀行が大量に国債を購入することにより巨額の予算を支える現状は、本来禁じ手である財政ファイナンスを事実上行っているも同然である。なお、民進党が指摘してきた通り、異次元の金融緩和も限界を迎え、昨年秋に日本銀行も金融政策の変更を余儀なくされた。米国が利上げに向かう中、いつ金融市場に大きな変動が起きてもおかしくない。こうした点でも、17年度予算は非常に心もとなく、喫緊の課題に応えるものとも、未来への責任を果たすものとも到底言えない内容となっている。

■新聞5紙はこう見る

 17年度予算をどう評価するか。昨年12月23日全国紙5紙朝刊の論調を紹介する。
■読売 「高齢化に伴う社会保障費の伸び(自然増)を財政健全化計画に沿った水準に抑える一方、子育て支援など『1億総活躍社会』の実現に向けた施策や『働き方改革』など経済の底上げに向けて予算を重点的に振り向けた」(1面)
■朝日 「くらしに関わる予算の抑制も目立つ。税収は伸び悩むのに、それでも社会保障費全体は膨らみ、防衛費や公共事業費は上積みされた。しかも新たな国債発行額(借金)だけは減らそうとして、ムリを重ねている」(2面)
■毎日 「社会保障費の伸びを抑制するため一定の所得のある高齢者に負担増を求めたが、歳出の増加に歯止めがかからず、予算規模は過去最大に膨らんだ」「人々の暮らしに及ぼす恩恵は限られそうだ」(1面)
■日経 「税収や利払い費の計算で工面し、国債の発行額を前年度並みに抑えたが、中長期で社会保障費の膨張を抑える制度改革は手つかずのまま」「円安や超低金利の追い風に頼るアベノミクスの短期主義の綻びを示す」(1面)
■産経 「新規国債発行額を7年連続で抑制し、安倍晋三政権が目指す『経済再生と財政健全化の両立』をかろうじて維持した。ただ、頼みの税収は伸びが鈍化し、限界がみえつつある」(1面)

(民進プレス改題20号 2017年2月3日号より)

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