保育・子育ての問題は、保育園や保育士を増やすという直接の問題から、ワークライフバランスなどの働き方改革、地域間格差や財政問題など多岐にわたっている。今回はに集まっていただき、保育・子育ての課題や問題解決に向けた取り組みなどについて語ってもらった。山尾志桜里衆院議員が司会を務めた。
山尾 今日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。では早速、自己紹介も兼ねて、思うところをお話し下さい。
天野 (1)子どもを3人産み(2)親の介護をし(3)働く――の全部を地でやっている、自称「安倍総理の理想のモデル」。昨年「保育園落ちた日本死ね」というブログが注目されたことは、保育園問題が顕在化し一定の成果があったと思います。しかし、ネガティブ・ワードだったことも含め、課題解決まで至らなかったことが残念です。そこで私はポジティブなキーワードで可視化をということで「#保育園入りたい」というキーワードを展開するキャンペーンを始めています。
加茂 外資系の企業なので育児休業が3年あることはありがたい。でもそのために上の子どもが「育休退園」(※1)に引っかかってしまい、別々の保育園に行くことになりました。それで例えば子どもを別々の保育園に通わせざるを得ない状況になったら、送り迎えが1カ所でできる送迎ステーションを作ってほしい。
小田原市はとてもいい街です。人もいい。でも大都会にあるベビーシッターなどの民間サービスが本当に少ない。公的な部分で支えてほしいが、地方自治体は厳しい予算の中でやっていることもあり難しい。
幡中 この4月に幸いなことに2次募集で小規模保育に入園することができました。品川区の担当者にも「奇跡ですね」と言われた。でも入れたから安心かというと、「3歳の壁」(※2)もあるので、すでに先が見えない状況になっています。4月から産休に入る予定で、1人目が保育園にいる間はポイント加点が付くが、突然ポイントが付かなくなるなど、制度がどう変わるか予測できない。それでも今の制度があると思ってリスクテイクをしないと、2人目を産むことはできません。
品川区は小規模保育をここ数年拡大したので、そのしわ寄せで「3歳の壁」が来ます。区も頑張っているとは思うのですが、自治体の努力だけでは追いつかないのは目に見えている。国が具体的な手を打っていかないともう持たない。
武村 1歳8カ月の子どもを育てていて、1年前は完全に待機児童。幸い夫が自宅で仕事をできるタイプの業種なので、どちらかが子どもを家でみながら仕事をするというスタイルでした。今は私の仕事場がシェアオフィスに入っていて、そこに無認可の民間保育施設が小規模ながらあるので、そこに子どもを連れていって働いていますがお金はかなりかかります。皆さんと同じで、保育園の入園申請を出していますが、入れるかどうか今週連絡が来るのを待っているところです。
保育士さんの待遇を改善して欲しいという声もたくさん聞きます。ケアワークをもっと評価して、保育士は国家資格なので看護師並みの給与水準とか、キャリアとして築き上げていけるようになればいいですね。
政治の世界のマジョリティーに
当事者意識を持ってもらう必要
山尾 ありがとうございます。ここからはざっくばらんにそれぞれのお考えを聞かせて下さい。
天野 保育士の給与が問題になっている。保育士自身がきちんとした生計を立てられなければ安定した保育の質は保てない。直接支払いをする等の施策も考えられる。待機児童ゼロと同時に、保育の質の担保も必要です。その次に、希望者が保育園に全員入れる潜在待機児童ゼロ。さらに無償化だとか、保育園義務教育化への流れになればいい。
武村 全体的に教育や子どもの福祉の問題は、少子化に進んでいるという傾向もあり、国会での議論の優先順位の上位に上がりにくい。私たちは何をしたらそれの優先度を上げることができますか。
天野 山尾さんみたいに理解があって当事者だとすごく分かってもらえるが、なにぶん国会にはそういう人が少ない。超マイノリティー。
加茂 「少子化だから保育園は作らない。地方なので」と言われることも多い。地方財政を見ればそうかもしれないけど。もう一つ、「私たちは祖父母に頼って子育てしてきたから大丈夫だ」と語る議員の声も聞く。
天野 無理解なおじさま議員の「俺たちの頃は理論」ですね。
加茂 そう。そんなおじさまたちに当事者意識を持ってもらえないかな。
幡中 「家族に頼ればいい。共働きでなくても切り詰めればやっていける。ぜいたくをしているからだ」などと私もよく言われる。昔はやっていけたかもしれないけど、今は若い人たちが片働きで子育てしていける給与体系ではないですね。
山尾 政治の世界ではマジョリティーが当事者ではないので、議論が的外れになる。「これから子どもは減っていくんだから教育費は減らせるよね」みたいな。子どもが減っていくんだから、一人ひとりにお金をかけないと日本はもたない。
加茂 日本が技術立国として生きていくためには教育にお金をかけないといけない。
幡中 少子化の理由には保育園もない給与も少ないというところがある。おじさまたちの老後も含めて、これからの日本を支えていくには少子化の解決が大事なのに。
国民の声をもとに、繰り返し主張
天野 ところで、急に働き方改革が注目された理由は何でしょうか? その何かをつかめれば保育の問題も注目されるんじゃないかと。
幡中 2、3年前までは私も夜平気で遅くまで残って仕事をしていました。それがガラッと変わって、今はみんな早く帰るし在宅勤務も週に1、2度、子どもがいない人もやっている。会社が変わったんですね。
天野 安倍総理が、「この問題はオレが命をかけてやる」と言ってくれれば、おじさまたちも「やらなければいけないな」となってくると思うんだけど。トップダウンでそこをやって欲しい。
山尾 今は保育園入園の通知の季節でもあるし、2年連続で増えてきた待機児童が3年目どうなるのかという数字が出てくる。このタイミングに「この問題はまだ終わっていない」と、皆で声を上げたり。私も質問していきます。
天野 こういうこと言っていて、制度ができる頃には私たちはおばあちゃんになっているかも。恐らく税の再分配のメリットを享受できない。でもやることに意義がある。
山尾 できれば数年でやりたい。消費税1%で2・5兆円。これだけあれば待機児童対策や教育無償化のかなりの部分がカバーできる。その時にはじめて、「負担とサービスが見合ってる」ということを体感できると思う。それがあってはじめて、国民と国の信頼もつなげ直すことができる。
皆さんからいただいた声をもとに、繰り返し繰り返し主張し、振り払っても振り払っても付いてくるぞみたいに思われるくらい、安倍総理に働きかけていきます。
今日はありがとうございました。
(※1)下の子が生まれ育児休業を取得すると、保護者が自宅にいるので上の子が退園しなくてはならなくなること。自治体により異なる。
(※2)小規模保育の対象は原則0~2歳児。3歳からは、幼児クラスのある保育施設に転園しなければならない。
(民進プレス改題22号 2017年2月17日号より)