参院予算委員会で9日、外交・安全保障に関する公聴会が開かれ、民進党・新緑風会の杉尾秀哉議員が質問に立ち、北朝鮮が6日に弾道ミサイル4発を同時発射した問題をめぐって民進党推薦公述人の小此木政夫慶應義塾大学名誉教授らに見解を尋ねた。

 1994年の朝鮮半島危機と今の状況が似ているとの小此木公述人の指摘を取り上げ、「当時と今と比較して危機の度合いはどれくらい深刻な状況だと考えるべきか」と質問した。小此木公述人は「94年危機では、北朝鮮はまだミサイルや核兵器を保有しておらず、核兵器開発着手やNPTからの脱退が問題だった。ところが今回、北朝鮮は核とミサイルの結合という最終段階まで来たことを主張している。私たちにとって安全保障上のリスクは前回とは比べ物にならない」と強い懸念を示した。

 また、今回の弾道ミサイルが在日米軍を標的としていたと北朝鮮側が主張している問題に関連して「こうしたミサイル同時発射に対して日本の自衛隊の能力で対応できるか」と元自衛隊幹部で現国際大学教授の山口昇公述人にただした。山口公述人は「イージス艦のスタンダードミサイルは高度200から300キロメートルで上下するミサイルを撃つことができ、数発であれば自衛隊の能力で迎撃することができる」等との見解を示した。

 こうした情勢を踏まえ政府・与党内で敵基地攻撃能力の保有議論が取りざたされていることについても意見を求めた。山口公述人は「大事なことは敵基地攻撃はそんなに簡単ではないということ。どこを攻撃するかの情報やそれを破壊したと確認する手段がなければならない。それを一国でできるのは米国しかない」等と説明。こうした議論にあたっては、「監視、警戒、その効果を確認する壮大なシステムを念頭におかなければならない」と述べた。

小此木政夫公述人