中小企業を後押しする
民進党の視点
中小企業が元気になるためには何が必要か。中小企業の事業主など現場の声を受け止めて作り上げた民進党の政策「第三者保証禁止法案」「中小企業社会保険料負担軽減法案」について階猛、中根康浩両衆院議員に話を聞いた。
第三者保証禁止法案
不合理な制度を改めるために引き続きの議論を
民進党は、旧民主党時代から提出していた、会社等の経営者等以外の個人が融資の保証人になることを禁止する「第三者保証禁止法案」の趣旨を盛り込んだ法案を作成し、衆院法務委員会で審議された政府提出の「民法を一部改正する法律案」の修正案として提出しています。
この法案は以下の5項目を定めています。
①暴利行為を無効とする
暴利行為に関する判例法理(他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為は公序良俗に反し無効とするもの)を明文化して消費者保護を図っています。
②書面によらない契約により生じた少額債権は短期消滅時効を導入する
少額債権については、弁済後に受領した領収書等の証拠を保存しないことが多いため、短期消滅時効を導入しなければ弁済後の二重払いの危険が増加するという指摘があります。そこで、書面によらない契約をした少額債権の債務者は通常より短い2年間で消滅時効を利用できるようにしています。
③中間利息控除を行う場合の利率を年2%、3年ごとの変動制に修正
今回政府案では遅延損害金の利息を計算する場合の利率と逸失利益(死亡などにより将来得られなくなった収入)を一括で得る場合の中間利息の控除利率を一律に3%(3年ごとに見直し)としていますが、不合理な面があります。
遅延損害金は、今もらえるはずのものを後からもらうことになります。その間、相手に対して期限を猶予していることになりますので、貸出利率を前提に考えなければいけません。他方、逸失利益は将来もらえるはずのものを今、ディスカウントしてもらうことになるので、そのお金を本来得られる時までの運用利率で考えるべきです。そこで、われわれは遅延損害金利率を3%、中間利息控除利率を2%とし、それぞれ3年ごとに金利情勢によって変動しうることとしました。
④第三者保証(経営者等以外の個人による事業用融資の保証)を原則無効とし、例外的に事業承継予定者等は公証人による保証意思確認手続きがあれば有効とする
旧民主党の案は、第三者保証は全面禁止にしようというものでした。政府案は第三者保証については、全て公正証書を要求し、公正証書があれば、保証はできるという案ですが、今回の審議を踏まえわれわれは原則禁止としつつ、一定の人的・経済的につながりのある人については、公正証書があれば認めるという折衷案を出しました。
⑤定型約款を変更する場合の要件を消費者側に不利益を与えないかどうかも加味して決める
政府案では消費者側の事情をあまり考慮せずにどちらかというと事業者側の都合で変更できるようになっていました。そこで、「変更の程度」や「相手方の受ける不利益の程度」、「その不利益の程度に応じた措置の有無」を明記し、消費者側に不利益を与えないかどうかも加味して決めることを盛り込みました。
以上のような法案をわれわれは個人の保証人はもとより、消費者、弱者を保護する観点から作成しました。残念ながら衆院法務委員会で4月12日に与党の反対により否決されました。しかし、特に第三者保証は、意図しない債務負担が発生する結果、自殺したり家計が破たんしたりというような悲劇が起こりえます。われわれはこのような悲劇を確実に防止するために、政府の考え方にも歩み寄り、現実的で合理的な案を提示しました。ですから、必ず実現しなければなりません。今後も積極的に与野党で議論を続けていきます。
中小企業社会保険料負担軽減法案
中小企業が一番苦しいところに手を差し伸べたい
民進党は、新たに正社員を雇い入れた中小企業に対して、新規増加の社会保険料負担額の2分の1相当を10年間国が負担する「中小企業社会保険料負担軽減法案」を提出しています。
さまざまな資料を見ていて、中小企業が抱えている課題に必ず社会保険料負担が重荷であることが出てきます。人材の確保が事業や企業継続に必要ですが、正社員を雇うと必然的に社会保険料が上乗せされて負担感があります。これがあるから正社員の雇用をためらってしまうと、中小企業向けのアンケート調査にはっきり表れています。そのことを何とか支援したいとの思いでこの法案を後藤祐一衆院議員と一緒に作成しました。
法人税の減税は、税額控除と言って法人税の軽減が中心で、もともと赤字で法人税を払わない会社はその恩恵にあずかれない。しかし、社会保険料は赤字企業であろうが黒字企業であろうがみんな同じように負担します。そこで、特に技術を持っていて将来性はあるけれども赤字だったり、黒字でも正社員の雇用に二の足を踏んでいるところを何とか救えないかというのが法案作成の直接的な動機です。
対象は、法律が施行された後5年以内に新たに正社員を雇った中小企業に限りました。成果がどれくらいあるのかを確認するためです。ただ雇い入れただけではなく、それまで正社員が10人いたとしたらそれを12人にするとか15人にするとか積極的に事業展開しようという意欲のある会社が対象になっています。例えば、はじめに正社員が10人いて、5人を解雇して、新たに3人雇ったという場合は対象外です。支給期間は10年間。2018年の4月に雇い入れた場合には2028年までとなります。
なぜ、われわれがこの法案を強く推すのか。中小企業が本当に優秀な人材を正社員として確保できれば、図のように、中小企業、働く人、そして地域社会にとっても良い。うまくいけば、まさに3者に利益のあるウィンウィンウィンの関係が成り立つのが、この法案だとわれわれは確信しています。
本施策は申請ベースであるため、予算の無駄遣いが生じないことも特徴です。利用者が少なければそれだけ持ち出しは少ないですし、多ければ見返りがあります。この法案を地元で紹介しても悪く言う人はいません。ぜひ、民進党の看板政策として掲げていきたいです。
(民進プレス改題25号 2017年5月19日号より)