参院本会議で21日午前、安倍総理の所信表明演説に対する代表質問として大塚耕平代表が最初に質問に立った。質問では(1)日米関係に関する総理の基本認識(2)北朝鮮情勢への対応(3)実質賃金低下の原因(4)格差の拡大について(5)金融緩和継続の考え(6)現在の景気情勢(7)「新しい経済政策パッケージ」を作る理由(8)AI・ロボット・IoT活用による雇用への影響・対策(9)残業代ゼロ法案の審議(10)介護報酬・診療報酬改定への考え(11)自衛隊を違憲と考えているか(12)日本の政治の対立軸――等の問題を取り上げた(予定稿全文はPDFダウンロード参照)。
総理の外交姿勢については、「自国の利益を犠牲にして他国の利益を守る国はない」ことが「国際社会の現実だ」と大塚代表は断じ、米国についても同様の国家と捉えているか、あるいは米国が「自国の利益を犠牲にしてでも、他国の利益、例えば日本の利益を守る」国家と捉えているのか安倍総理の認識をただした。
北朝鮮情勢については、安倍総理が9月20日の国連演説で「必要なのは対話ではない。圧力」と述べ、11月6日の日米首脳共同記者会見では北朝鮮に対して「『最大限の圧力』を高めることでトランプ米国大統領と完全に一致した」と述べたことに触れた。大塚代表はこのことについて「総理は、対話は本当に必要ないと思っているのか。圧力と対話のバランスをどのように考えているのか」「トランプ大統領と『完全に一致した』と述べた『最大限の圧力』とは、具体的にどのような内容を意味しているのか」と質問し、「全ての選択肢がテーブルの上にある」としたトランプ大統領の発言を安倍総理が支持表明したことについて「軍事的オプションも含むという理解で良いか」と追及した。
内政について、大塚代表は実質賃金指数の推移を取り上げて、「安倍政権発足時の2012年第4四半期は104.7、直近の2017年第2四半期は100.5と低下している」と指摘。そのうえで、「失業率が完全雇用状態に近い水準になっても実質賃金が上がらない、むしろ低下しているという事態は、これまでの経済理論では説明できない何かが起きている」と述べ、「実質賃金が低下している原因、失業率が低下しても実質賃金が上がらない原因をどう考えているのか」と問いただした。
来年の通常国会で、過重労働につながる「高度プロフェッショナル制度」の創設や裁量労働制の対象業務の拡大が盛り込まれている「残業代ゼロ法案」と時間外労働の上限規制等を定めた法案を束ねて政府が提出する予定と言われていることにも触れ、「趣旨が真逆の内容を1つに束ねて審議を要求することは適切とは思えない。両法案を別々に国会に提出することを求める」と安倍総理に要請した。
大塚代表は、安倍総理が憲法に自衛隊について書き込むことにたびたび言及していることも質問。「総理は自衛隊を違憲と考えているのか」「合憲の自衛隊を憲法に書き加えることで何が変わると考えているか」「自衛隊の存在や行動にどのような変化があると考えているか」などと質問した。
大塚代表は、与党が今国会で質問割合を多くすることを要求していることや、森友・加計学園問題、PKO日報問題等で明確な説明を避けてきた政府の対応をとらえ、「総理の情報公開や説明責任に対する後ろ向きの姿勢、民主主義を破壊するかのような姿勢には目に余るものがある。その総理が『謙虚』をたびたび強調する姿は、笑止千万と言わざるを得ない」と批判。そのうえで、「私は、民主主義を重んじる勢力と、民主主義を軽視する勢力との対立こそ、現在の日本、これからの日本に求められる重要な対立軸であると考える。次の総選挙では、民主主義を重んじる勢力を結集し、国民の皆さんと国会に対し十分な情報公開を行い、十二分な説明責任を果たし、拙速な議論や傍若無人な国会運営をすることのない、より民主主義的な政権を打ち立てるために全力を尽くす」と決意を語った。