政府が待機児童の解消に向けての緊急対策を発表したことを受けて、民進党の「待機児童緊急対策本部」は28、29日の両日、内容を確認、精査するための会議を開いた。

 蓮舫代表代行は29日の会議で、「珍しく安倍総理がやる気を見せたと思っていたら結果がこれだ」と失望感をあらわに。政府の発表を受けて28日に談話を発表した対策本部事務局長の山尾志桜里政調会長は「ここまで一緒に頑張ってきた当事者の皆さんから、失望と怒りの声が届いている。一生懸命声を上げれば政治って動くんだと期待して、与野党なく皆で頑張ってくれると期待したのに、出てきたのがこれなのかと。『預けられればいい』となんて、一言も言っていない。本当に安心できる、子どもの年齢や月齢に見合って、豊かな成長を託せる保育園が欲しいといってきたのに、出てきたのがこれなのか、そういう声だ」と寄せられた声を紹介し、「お金(予算)をつけず、質を落として、子どもやお母さんに我慢してもらい、自治体の責任でできるだけ入れてくれ、と。なんでこれまで国が放置してきた責任を、子どもに我慢させることで解消させようとするんだろう。今時代が求めている、子どもにしっかりお金をかけて、この国の社会保障の持続可能性を作っていくことと真逆を向いている」と厳しい口調で語った。

 この日の会議には3人の母親が参加。子育てのために東京都練馬区から埼玉県所沢市へ転居したという母親は「市のホームページを見たら安心して子育てできる社会をつくっていると書いてあるので移ったら、全く違い、育休退園をさせるなど子育てに力を入れていない都市だった。そのまちが保育しやすいかどうかは待機児童の数が客観的に一番よくわかる。どういう政策をして、どう運営されているか客観的に見るためにも、待機児童の定義を明確にして、実情に合った数を公表してほしい」と厚労省に求めた。さらに「働く親の立場よりも、子どもの視点になって考えてほしい。安全性、安全が守られなかったら働かない。働ければどんな環境でもいいというのは違う」と親としての切実な思いを語った。

 また、2歳の子を認証保育園に預けている品川区在住の会社経営者の女性は「認可保育園8カ所に落ちたが、自営業や会社経営者はフルタイムで会社にいるのかなどと疑われ、ちょっとでも隙を見せると点数を下げられる。仕事上育休をとれなかったが、それも保育を必要としていないとみなされた。フリーランスで働く女性も、自治体の勝手な解釈で点数を下げられ、待機児童になっていく」と体験を語り、政府の緊急対策については「品川区ではすでにやっていることが多く、あまり効果がないのではないか」と感想を述べた。

 所沢市で「育休退園」を実際に求められたという女性は生後6カ月の男の子を抱いて参加。「今回与党から出た案は、すべて所沢市のやり方に似ている。子どもには一銭もお金をかけない。保育士さん頑張って、詰め込むから。譲り合いの精神でしょ、育休を取るのは頑張ったことにならないから席を譲ってくださいよ(と求める)。そんな仕組みを作ろうとしているのかと思って、ちょっと怖くなってきた」と率直な思いを語った。

 認可保育園の元園長で、現在署名サイトの「Change.org」で「保育士給与のために、一人当たり月5万円増額してください!」のネット署名を呼びかけている大川えみる氏は、「現在政府で進めている基準緩和策は、戦後すぐに作られた最低基準いっぱいまでに詰め込むもので、大反対だ。そんなことをすると子どもにとっても、保育士にとっても環境の悪化を一途をたどるだけで、施設内外の事故発生も促進するし、保育者の離職を大いに招きかねない。必ず保育職員の給与に使うための補助を増額すべき。保育士の仕事は国民の生活のライフラインも果たしている、その善意や志に甘えないで欲しい」などと発言した。

 認定NPO法人「フローレンス」代表で全国小規模保育所協議会理事長の駒崎弘樹氏は、政府の待機児童緊急対策について項目ごとに評価。自治体に積極認可を促すことなど、一部では評価できる点はあるとしたものの、保育士給与引き上げ額を示していないことや、人員配置基準を国の基準に引き下げるよう求めた点などは厳しく批判。後者については「ひどい話。現実的ではないし無理筋。しかもお金を出さないとは、ダメでしょう。これをやっては保育士さんたちはさらにやめていく」と指摘した。

 このあと、出席した議員や参加者と厚生労働省の担当課長との間で質疑が交わされ、最後に山尾政調会長は「待機児童は8万3千人を超える。立場を超えて、みんなで本当の解決をしましょう」と1時間半の会議を締めくくった。

 この日出されたさまざまな問題点は30日の衆院厚生労働委員会の一般質疑で、山尾政調会長らが質疑に立って、政府の対応をただすことになった。