衆院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会で18日、質問に立った岸本周平議員は、震災対応では政治家に瞬時の判断を求められることが多々あるとして、「政府に熊本の震災対策に集中していただきたい時期に、TPPの審議を強行したのは残念だ」と指摘した。
「震災対応に当たっては与党も野党もない。何でも協力するので地震の対応に集中してほしい」と釘を刺した。また、NPOへの対応に関して「安全の問題はあるが完全にシャットアウトするのはいかがなものか」と問題提起し、食料を配布する人員が足りないといった事態が現地で生じていることなども踏まえ、移動手段を自ら確保することができるなど、自己完結型で行動できる団体には現地での活動を許可するなどケースバイケースでの判断が必要との見方を示した。
岸本議員は熊本の地震と南海トラフの地震との連動性を懸念する声が広がっていることを踏まえ、専門的な見地からの現状説明を気象庁長官に求めたが、気象庁長官は熊本の地震は内陸で発生した直下型の横ずれ断層型の地震で、南海トラフについては四国や紀伊半島が位置する大陸のプレートとその下に沈みこむフィリピン海プレートの境界が滑ることにより発生する逆断層型の地震だなどと説明し、「現在の観測状況から言うと熊本の地震以降、南海トラフの想定域での特段な変化はない」と答弁した。専門家ならではの今後の見通しを岸本議員は重ねてただしたが、気象庁長官は「地震はいつどこで起きてもおかしくないという心構えで対応を」などと発言するだけだった。
TPP協定に関しては加糖調整品の関税割当と調整金に関して質問。岸本議員は「砂糖は重要5項目に入る大事なもの。北海道のてんさい、鹿児島や沖縄のさとうきびは戦略物資で国内需給を高めるために絶対に守っていかなければならない」との見方を示した。そのうえで、国内産砂糖は競争力の面で海外産にかなわないため、生産農家を守るために調整金という形で輸入の砂糖に価格を上乗せする対策を講じてきたことを岸本議員は説明。「調整金5百億円、一般会計100億円で国内の生産農家を守ってきた」として、TPP協定がその仕組みに与える影響を質問した。岸本議員は(1)砂糖から調整金を取ってきたがTPPによって輸入砂糖への上乗せの仕組みが変わるために20億円程度調整金が減る見通しであること(2)ココアに混ぜた砂糖など加糖調整品と位置付けられたものは調整金を取ることができないうえ、この輸入が増えれば国内生産品への影響は大きいこと――も指摘。TPP協定において、加糖調整品からも調整金を取ることを日本政府は求めたが実現はできなかったことを「何とかしようという考えは日本政府にはなかったのか」と追及。石原大臣は「粗糖や精製糖には調整金は取るしくみが認められたが加糖調整金からは取る仕組みにはならなかった」と説明した。TPPの協議過程の資料が一切示されないなか政府が国内農家を守るためにどういう交渉をしたかが見えないのがこうした点からも一段と問題だと岸本議員は述べ、熊本の地震災害への対応が落ち着いた段階で十分な審議が必要だと問題提起した。