枝野幸男幹事長記者会見

2016年4月19日(火)15時00分~15時27分
編集・発行/民進党役員室(項目ごとに編集しました)

★会見の模様を以下のURLで配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=ko6urc9Vw78


■冒頭発言 ■質疑

■冒頭発言

○熊本地震について

【幹事長】
 まず、熊本地震について。
 お昼過ぎの段階で、亡くなられた方が44名と報告を受けておりますが、改めて、亡くなられた皆様のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、大変多くの皆さんが被災され、避難生活をされておられます。お見舞いを申し上げます。
 特に連絡がとれない方が8名。政府においては、警察・消防・自衛隊など、大変厳しい中、2次災害の不安もある中で大変なご努力をいただいていますが、引き続き全力を挙げていただきたいと思います。
 昨夜も震度5強の地震が発生しております。またいつ大きな地震が来るかもしれないという不安の中で、大変不便な避難生活を強いられている方々、相当精神的にも肉体的にも限界に近づいているのではないかと感じています。個別の被害者、被災者の皆様に対するもの、それからフォローが行き渡ることが重要であり、政府には万全の措置を求めてまいりたいと思います。

○熊本地震・災害対策に関する民進党の提言について

【幹事長】
 民進党としても、災害対策本部で現地からのヒアリング、そして行政からのヒアリングを重ねております。これをまとめて民進党としての提言、政府・与党に申し入れるべく、今、日程調整をしています。相手も災害対応がありますので、決まりましたらご報告させていただきます。
 この災害対策、個別具体的なところは申し入れの上で、皆様にもお伝えしたいと思いますが、どうも報道等あるいは役所からのヒアリングを聞きながら、いつも「非常対策本部」と言っておられるので、あれ?名称を法律改正したかな、と思っておったのですが、現状では防災担当大臣を本部長とする「非常災害対策本部」が設置をされていて、内閣総理大臣あるいは防災担当以外の大臣は、この非常災害対策本部の本部員ではありません。
 「緊急災害対策本部」を設置しますと、内閣総理大臣を本部長として、防災担当大臣と官房長官が副本部長となり、全ての大臣あるいは危機管理監等が本部員となるという構成でございます。東日本大震災の時は即時、緊急災害対策本部を立ち上げまして、この緊急災害対策本部において総理大臣のもと、全省庁・政府を挙げて対応に当たりました。この緊急災害対策本部は阪神・淡路大震災を受けて、阪神・淡路級の大規模災害に対応するべく設けられた制度で、前例としては東日本大震災の際に設置されたのみでございます。それ以外の、例えば大きな災害では新潟県中越地震等では非常災害対策本部でした。
 最初の地震、そして2度目の、後に「本震」と言われた地震、そこまで来て被害状況が相当広範かつ10万人単位の被災者が出ている状況においては、そして総理自身もぶら下がりその他、それから非常災害対策本部の会議の映像などを見ますと総理ご自身も出席されているようでございますので、まさに総理自身が陣頭指揮をとるという思いであるならば、これは法律上どちらに該当するべきなのかという行政的な評価はあるかもしれませんが、政治的には、最近ではやはり東日本大震災、阪神・淡路大震災に近い大きな被害を受けている事態だと思います。ぜひ緊急災害対策本部に切りかえて、総理大臣自ら本部長として陣頭指揮をとっていただきたいと強くお願いしたいと思っているところでございます。

○TPP特別委員会の審議について

【幹事長】
 それからTPPの審議については、繰り返し、なんでこんな状況で無理して昨日委員会を開いたかという思いですが、この災害対策本部のたてつけを考えれば、総理ご自身もが対策本部員でないから「委員会をやってくれ」とおっしゃったのかと思いますが、10万を超える皆さんが食料・水に困っておられる。昨日の段階では10名近い皆さんが安否不明で救命・救出活動に当たっている。こういう状況で国論を二分するようなテーマの審議を進めるというのは、何を無理されているのかなという強い違和感を私も覚えているところです。
 その上で、今日は一般質疑が行われました。今も継続しておりますが、午前中の玉木雄一郎議員の質問で、やはり政府・与党の説明がどうも違っていたということが明らかになったと思います。
 いわゆる「重要5項目」、これは聖域として守ると国会決議にもあったところでございますが、重要5項目の中に含まれているもので、今回の交渉で無傷のものはない、今回の協定の前と後で影響を受けていない、変更がないものはないという答弁をせざるを得ないところに追い込みました。
 まさに聖域を守れなかった。都合のいい部分の数字だけ取り出してきていますが、品目ごとに見ると、全ての聖域だったはずの5項目の品目は、今回、何らかの形で変更になると。このことを国会で答弁せざるを得なくなりました。まさに国会決議、重要5項目は守ると言ってきたことが、細かく詰めていくと事実と違うということが明らかになったと思っております。
 この点などについては、さらに引き続き厳しく、国会が開かれるならば、この審議が進むならば、追及していかなければならないと思います。


■質疑

○社会保障と税の一体改革への影響について

【共同通信・比嘉記者】
 総理はこれまで消費税増税の判断について、東日本大震災かリーマンショック級(のことがなければ)という前提条件を付けているが、今回の対応、それから地震の規模に鑑みて、消費税増税の判断にどのような影響があるとお考えか。

【幹事長】
 今、まだ救出・救命を待っておられる行方不明者の方がいらっしゃる。あるいは何が余震で何が本震かわからないような状況で、震度5強の揺れなども24時間以内に起きている状況ですので、これがどう影響するかということについて申し上げる段階ではないと私は思います。まずは、この災害対応に全力を挙げることが政府に求められていると思いますし、私どももやはりそのことを求めていくのだと思います。

○川内原発について

【フリーランス・横田記者】
 熊本地震の揺れの最大値1580ガルに対して、川内原発の耐震基準・安全基準(基準値振動)は620ガルにすぎない。2分の1程度ということについてどう思われるか。隣の県の川内原発の基準が、実際に起きた最大の揺れの半分にすぎなかったにもかかわらず、安倍政権、丸川環境大臣や菅官房長官は原発を停止する必要がないと言っているが、この政府の対応についての見解を伺いたい。

【幹事長】
 今日も我が党の災害対策本部で、そのことについて規制庁の説明を求めたのですが、十分な説明はいただけておりません。
 関係地域の皆さんにとっては大変な不安要因であるのは間違いないと思っておりますので、もし基準を満たしているという状況が変わらないのであるのならば、もっとわかりやすく、具体的・丁寧な説明をする必要がある。それを求めてまいりたいと思います。

【フリーランス・横田記者】
 規制庁の立場としては、政府も追認しているが、今回の地震で原発施設内での揺れは大したことがなかった、安全基準内に入っているという説明を根拠にしているが、直下型地震が原発施設に極めて近いところで起きた場合のリスクを無視しているように思える。この対応、この姿勢についてはどう思われるか。安全神話が復活したという指摘もあるが。

【幹事長】
 その科学的知見について、私が申し上げられる知見を持っているわけではありません。ただ、そうした指摘があることに対して、わかりやすい説明ができていないというのは間違いないので、わかりやすい説明を求めてまいりたいと思います。

【フジテレビ・陶山記者】
 そういった状況の中で、今後、提言を政府に出すという話だったが、川内原発の一時停止などは求めるのか。

【幹事長】
 停止を求める声が、特に熊本あるいは鹿児島などであるということを踏まえた上で、そうした皆さんの不安感を解消できるように、しっかりとした説明なり再チェックなり、そうしたことを求めてまいりたいと思っています。

【産経新聞・松本記者】
 それは停止までは求めないという理解でよろしいか。

【幹事長】
 現時点で求めようということで整理をしているのは、停止をしてくれという声もあることを踏まえて、そうした声に応えられるような検証や説明をするべきであるというのが、現時点で、特に政府に対して求められることではないだろうかと思っています。

【フリーランス・横田記者】
 蓮舫代表代行が北海道5区補選の応援に行かれた時の演説で熊本地震に触れ、これだけの地震が起きたのだから再稼働については考え直すべきだ、原発の安全基準についてもう一回立ち止まって考え直すべきだということをおっしゃったが、これが民進党の基本的スタンスと捉えてよろしいか。先ほども、世論の動向等を踏まえて検討するということだったが。

【幹事長】
 「世論の動向を踏まえて」とは言っていない。

【フリーランス・横田記者】
 世論の声。

【幹事長】
 「世論の声を踏まえて」ではなくて、そういう声もあることを踏まえて、そうした人たちに理解できるように説明しろと言ったのであって、我々が世論の動向を踏まえて判断するわけではありません。誤解のないようにお願いします。そういう声があるのだから、そういう不安の声に対して応えるような検証と説明をしてください、と申し上げている。

【フリーランス・横田記者】
 民進党としては、例えば川内原発差し止め訴訟の弁護団からヒアリングするとか、去年の4月に差し止めが却下された時に直下型地震のリスクを指摘しているが、そういう専門家からヒアリングすることなどはお考えになっているか。

【幹事長】
 私は今日、一貫して申し上げているが、今は緊急事態ですので、中長期的に今回の事態を受けてどう考えるのかということを考える段階ではまだないと、繰り返し申し上げているとおりです。
 ただ、少なくとも、原発を稼働し続ける以上は、それについて、まさに今、緊急事態のもとで不安を持っていらっしゃる方がいるのだから、そうした皆さんが一定程度の安心感を持てるような十分な検証と説明が政府に求められていると申し上げています。我々の基本的な立ち位置は、今回のことを受けて将来検討をすることはあるかもしれませんが、従来と変わっていません。

○緊急災害対策本部の設置要請について

【「FACTA」・宮嶋記者】
 法律のたてつけを私はちょっと理解していないが、緊急対策本部は全大臣と、国家非常事態宣言のようなたてつけだったように思う。今回の熊本の震災、確かに避難されている方が10万人で、これが激甚災害であることはわかるが、東日本大震災と同等級ということになるのか。やはりそこは厳格なメルクマールがないと、と私などは思うが、今の段階で緊急対策本部を立てたほうがよいと思われる背景はやはり避難者の数ということになるか。

【幹事長】
 東日本大震災の被害の広がりとの比較というよりは、阪神・淡路、それから過去に緊急災害対策本部まではつくられなかった例えば新潟県中越地震などと比較した時に、率直に言って、明確にどちらかに近いと言える状況ではないと思います。それは政府としても、この事態に対する危機感がどういうものであるのかということによって、政治判断される話ではないかと私は思います。
 これだけの規模の方が避難を余儀なくされていて、なおかつ、さらなる大きな地震のリスクが非常に高い状態が継続していることを考えると、なおかつ総理大臣自身が自らのリーダーシップでと、繰り返しおっしゃっているわけで、総理大臣がリーダーシップをとるためには、法律上はやはり緊急災害対策本部を作られるべきではないかと。私はそう思います。

【「FACTA」・宮嶋記者】
 危機感の重さの受け止めだというのはよくわかった。しかし緊急対策本部になれば当然TPP(の審議)をやっているなんていうことは考えられないし、40日後に想定される同日選なんていうのもあり得ないのだろうと。いわゆる緊急事態か非常事態かというのは政治的な意味が大きいようにも私は思うが、逆に枝野さんは緊急事態だとご認識になるのだとしたら、この1ヵ月やそこらで同日選なんてあり得ないという論理的な結論になるのではないか。そこが政府と違うのかなと思うが、その辺はいかがか。

【幹事長】
 非常災害対策本部をつくる案件か緊急災害対策本部をつくる案件かというのは、必ずしも(事態が継続する)期間とはイコールではないと思います。できるだけ早く、この余震とも言えないような規模の大きな地震がいつ起こるかもしれないという状況が解消してほしいと思いますし、そうしたことの中で、10万人単位で避難をされている方が急速に減っていくことを期待したいと思いますが、もしそうであれば期間的には短いかもしれないけれども、特にこの数日の状況というのは、総理大臣が先頭に立つ、そして総理大臣の指示のもとで各省庁がその指示を受けてしっかりと対応すると。
 現状では、非常災害対策本部では総理大臣は本部員ではありませんので、通常の内閣法に基づく指示しかできない。緊急災害対策本部をつくることで各省庁に対する具体的な指示がそれに基づいて可能になりますので、総理大臣のリーダーシップというのであるのならば、少なくとも足元のところは、もう数日は、少なくともそういう状況ではないのかなと。どの程度で落ち着くかは、やはり早く落ち着いて、そういう状況が解消できることを期待したいと思いますし、その可能性はあると思っています。

【「FACTA」・宮嶋記者】
 3.11を経験したのは民主党で、その当時の首相官邸の様子がフラッシュバックする国民も少なくないと思う。その当時の官房長官であった枝野さんとして、総理がリーダーシップを(発揮)するに当たっては、3.11の教訓も踏まえて、現政権は緊急事態とするのがベストだと思うと、そういう前向きというか、その教訓を踏まえた提言と受け取ってよろしいか。

【幹事長】
 そうですね、あえて申し上げれば、これは法律上のたてつけでは、どちらを選択することもあり得る制度だろうなと思います。ただ、私自身は今、野党という立場ですから、政府ほど直接的に情報が入ってくる立場ではありませんが、ただ、こういう発災直後の現地の状況というのは、行政手続を経て官邸に上がってくるよりも、実は報道等のほうが早かったりするというのはあの時も経験しているのですが、そこから感じている被害の状況や広がり、実際の避難所等におけるさまざまな声、それから現地の、我が党の熊本県連の対策本部などから入ってきている声を考えると、逆に言うと、私は今日まで緊急災害対策本部がつくられているものと思っていました。対策本部の映像でも、総理が真ん中に映っておられましたので。非常災害対策本部であれば総理はメンバーではないので、あくまでもあれはオブザーバーということになるので、当然、緊急災害対策本部だと思っていた。
 私は、あの時の初期対応に準ずるくらいの緊急、かつ強力なリーダーシップと国のバックアップがないと現地は対応できない、そういう事態だと思います。

○党本部の取り組み経過について

【産経新聞・松本記者】
 先週の話だが、発生直後に民進党の対応を広報資料として頂戴したが、発生当日の夜に福山哲郎幹事長代理から熊本県の蒲島知事のほうに電話で連絡という項目があった。差し支えのない範囲で、これは具体的にどういったことを連絡されて、どういったやりとりがあったか伺いたい。

【幹事長】
 もともと福山さんと蒲島知事は、松下政経塾で蒲島知事が政治学とかを教えておられたということで、まさに20年、30年来のお知り合いということで、その個人的な関係に基づいて、大丈夫ですか?という連絡をおとりいただいた。そこでは当然、片方は危機管理に当たった官房副長官経験者で、片方はまさに危機管理にこれから当たる知事さんですから、2、3の会話はあったと聞いておりますが、これはご本人の承諾なく公表すべき性格のものではないと思います。

○おおさか維新・片山共同代表の「タイミングいい地震」発言について

【NHK・岡崎記者】
 今日、おおさか維新の両院懇談会で片山代表がこういう発言をされている。熊本の地震について、「例えばTPPの審議や採決、補選にも影響がないわけではない。さらにダブルになるのかならないのか、消費税を上げるかどうか、全部に絡んでくる、大変タイミングのいい地震だ」という発言をされているが、何か所感があるか伺いたい。

【幹事長】
 直接どういうご発言をされたのか、今、ご紹介をいただいたのは切り取られている部分ですので、前後どうおっしゃっているのか確認なしに軽々なことを申し上げるべきではないと思います。
 ただ、この手の災害の場合は、もちろん報道等では全国同じ情報を共有するわけですが、現場の非常に厳しい環境・状況や実際に被害を受けておられる皆さんの思いが、なかなかそれ以外の地域の方の中には感じられないことがあるというのは、東日本のあれだけの規模の時でも残念ながら若干ありました。やはり想像力を十分に働かせて、この被災地に現におられて苦慮している皆さんの思いにどれぐらい想像力を持って近づけるかということが大事だと私は思います。

○衆議院北海道5区・京都3区補欠選挙について

【時事通信・岸本記者】
 今週末に(投開票を)迎える北海道と京都の補選に関して、今のところの現状認識と、実際に補選を迎えるに当たっての抱負を一言いただきたい。

【幹事長】
 正直言って、よくここまで追いついてきたなと思っています。本人も頑張っていますし、党派を超えた幅広い市民の皆さんが大変力強く活動していただいていると。それを我々、民進党の仲間も、秘書会のメンバーなども含めて、裏方としてしっかり支えさせていただいている中で、よく追いついてきたなと思っています。
 ただ、まだ追いつき切れていない。あと1週間で何とか追いついて追い越したいと。最後は、まだ投票先を決めていない方が、潜在的には池田まきさんに入れてもらえる余地の大きい方だと思っていますので、そういう方にどれくらい投票所に行っていただけるか。そこに向けて我々も特に裏方の役割をしっかりと果たしていきたいと思っています。