岡田克也「無所属の会」代表記者会見
2018年4月17日(火)15時01分~15時32分
編集・発行/民進党役員室
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■冒頭発言 ■質疑
- 日報隠蔽問題・イラク戦争検証について
- 米英仏によるシリア攻撃について
- 現役自衛官による国会議員への暴言事件について
- 政府・行政府で相次ぐ不祥事について
- 新党結党に向けた議論について(1)
- 「ロストジェネレーション」世代の雇用対策について
- 新党結党に向けた議論について(2)
- 国連決議なき武力行使について
■冒頭発言
○日報隠蔽問題・森友問題・加計問題等での国会対応について
【「無所属の会」代表】
私からは、まず自衛隊のイラク日報問題が、また新しい事実が明らかになったわけですが、このことも含めて、森友・加計問題、それぞれ本来であれば一つだけでも政権を揺るがすような事態です。国会で野党6党がしっかりとまとまって対応していかなければならない。きょうの執行役員会でも申し上げたところです。
財務省の次官の問題も出てまいりました。これも事実だとすれば大変重要な問題です。ただし、この問題はこの問題として、やはり民主主義の根幹に関わる三つの問題について手が緩むことがあってはならない。メディア的には次官の問題のほうが食いつきがいいというか、取り上げやすい面はあるかもしれませんが、もちろん重要な問題ではありますが、連休を控えて、証人喚問の実現など全力を挙げて従来のこの三つの問題に取り組んでいかなければならないと思っています。
安倍総理は、「自分が行政府の長として責任を持って対応する」ということを繰り返し言われるわけですが、私が現状を見ていて一番ぴったりだなと思う言葉は、「魚は頭から腐る」ということです。全てが安倍総理につながる話。その「魚の頭」が「私の責任できちんとします」と言われても、説得力は私はほとんど感じられないし、国民の皆さんもそういうふうに受け取られている方が多いのではないかと思います。
これが一点です。
○米英仏によるシリア攻撃について
【「無所属の会」代表】
アメリカを中心とする、イギリス、フランス、3ヵ国によるシリアへの攻撃がなされました。この点についてはあしたの外務委員会でも少し取り上げようと思っていますが、非常に難しい問題であることは事実です。多くの罪なき子どもや女性を含めて民間人が殺された。しかも毒ガスが使われた。サリンとか塩素とか言われていますが、その可能性が極めて高いということです。シリア政府がこれを使った可能性は、状況証拠から見てほぼ明らかだというふうにも思えますが、決定的な証拠はありません。ロシアの反対で、国連決議もない。そういう中で行われた武力行使です。
国連決議がないから何もできないかと言われれば、必ずしもそうではないと思いますが、今回のことについて日本政府は、まず「決意を支持する」と。「化学兵器の拡散・使用は決して許さないという(米・英・仏の)決意を支持する」。その上で、総理の言葉を借りれば、「3ヵ国の行動は、これ以上の事態の悪化を防ぐための措置と理解している」と言われました。
外務大臣はもう少し付言して、「悪化を防ぐための措置」ということについて、「(シリアの化学兵器の)研究開発能力を低下させる措置」だと。これを「理解する」と言われました。
ただ、研究開発能力を低下させるために国連決議もない中で武力行使をしていいというのは今までの論理にはなかったことで、従来、例えばコソボの折、これは別に国際社会の中で確立した考え方ではありませんが、やはり人道的な被害があるときには国連決議がなくても有志連合でも武力行使できるという議論がなされたことはあります。今回のことは、シリア政府が行ったということが証明されていないということもおそらくあるのだと思いますが、人道的なことだから武力行使をしたというよりは、研究開発能力を低下させるために措置をしたのだと、日本政府はそう説明しているわけです。
これは武力行使を行うことができる範囲をかなり拡大して考えているということになるのだと思います。したがって、説明としては不十分と言わざるを得ません。こういったことについて、もう少し丁寧に、そして将来的に武力行使が際限もなく広がっていくことのないように説明をする責任が政府にはあると思います。
また、北朝鮮の問題に関して河野大臣は、アメリカというのは従来から国際規範に違反するような武力行使はしないのだと、そういうふうに理解していると答えてきたわけです。これは、「あらゆる選択肢がテーブルの上に乗っている」とトランプ大統領が言っている、その「あらゆる選択肢」の中には武力行使もある。その武力行使の中には、国連憲章で認められていないような単独行為・先制攻撃も場合によっては入ってくる。それを「高く評価する」とか「完全に一致した」とか言うのはおかしいのではないかと私は指摘したわけですが、図らずもこのシリアの問題でやはりこういうグレーゾーンの問題というのが出てきているわけで、武力行使について「100%一致した」とか「高く評価する」というのは、やはり非常に危ない、必要のない発言だったのではないかと改めて感じているところです。
■質疑
○日報隠蔽問題・イラク戦争検証について
【フリーランス・堀田記者】
イラクの隠蔽問題に関して、それと今回のシリア攻撃についても同じようなことが言えるが、結局、根本的には小泉さんだ。要するに「戦闘地域」に行ったわけです。ジョージ・ブッシュ・ジュニアにしてもトニー・ブレアにしても国連にしても「間違った戦争だ」と言っているのに対して、全然反省していない。日本国も、検証は薄っぺらなものだ。だからイラクの隠蔽問題に関して、それから今回に関しても、要するにアメリカに追随するということに関して、とにかく小泉さんを呼んでやれば、憲法の問題もいろいろあると思うが、どうか。
【「無所属の会」代表】
それは一つの考え方でしょうけれども、今は先ほど言った三つの問題について徹底的に突き詰めていくことが重要だと私は思っています。
小泉さんの話は、二つの話を今一緒に言われたと思うのですが、まずイラク戦争を始めたことについて「支持する」と日本国総理大臣として言われたことの問題。これは検証の対象にも将来しなければいけない問題だし、私も当時幹事長として本会議場で「大量破壊兵器はないかもしれない」と言ったところ、相当やじを浴びました。当時はメディアもかなり、大量破壊兵器があるという前提で決めつけているメディアも多かったのではないかと思うのです。ただ、査察に行った国連から派遣された人たちの発言というのは、もう少し待ってくれということだったわけです。そういうことも踏まえて私は申し上げたのですが、当時の大きな流れはそうだった。少なくとも総理大臣ぐらいはそういうときに冷静に判断してもらいたかった。せめて「理解する」と、コソボのときと同じように言うべきだったと今も思っているところです。
日報の問題は、小泉総理自身が「戦闘地域」という概念を理解しておられなかった。そういう中であの大変な法律が通ってしまったということですが、私はかねがね申し上げていますが、(陸自が活動した)サマワの問題もそうです。しかし、航空自衛隊のバグダッドにおける行動はもっとさまざまな問題を含んでいるはずだと思っています。
サマワは、今で言うと後方支援的というか、民生の安定のための行為。しかし、それが「非戦闘地域」、戦闘が行われていない地域ではなくて、戦闘が時々行われる地域の中で活動が行われていたという問題ですが、バグダッド空港だけが「非戦闘地域」で周りは「戦闘地域」、そこに航空自衛隊が(米軍を中心とした多国籍軍)兵士を含めて運んでいたと。これは戦闘行為そのものではないか、あるいは少なくとも後方支援ということになるのではないかと私は思っていて、航空自衛隊の日報をぜひ読んで検証してみたいと思っています。そういうものがきちっと出てくることを期待したいと考えています。
○米英仏によるシリア攻撃について
【「フランス10」・及川記者】
コソボ紛争のときにフランスのある学者が、これは推定有罪で攻撃したと、これは肯定的な文脈で言っていた。今回も、推定無罪ではなくて、アサド政権が化学兵器を使用したんだという推定有罪で行ったわけだが、しかしながら、ノーベル平和賞受賞団体の化学兵器禁止機関(OPCW)が14日から現地調査をすることになっており、今、現地調査に入っている。しかし、その14日の現地調査の前日に米英仏はシリアを空爆した。せめて査察調査の結果を待ってから攻撃すべきだったのではないかと思うが、岡田代表の見解を伺いたい。
【「無所属の会」代表】
そういう議論も当然あると思います。ただ、ロシアが、じゃあそういった査察団に対してきちんと査察を認めているかどうかというのは、また議論のあるところです。したがって、一つの要素だと思いますが、それが全てではないと思います。
○現役自衛官による国会議員への暴言事件について
【朝日新聞・山岸記者】
昨夜の出来事になるが、民進党の小西洋之参議院議員が国会周辺の路上で現職自衛官を名乗る男性から「おまえは国民の敵だ」と暴言を繰り返し受ける事案があった、ということをけさの参議院外交防衛委員会で小西議員が明らかにされ、小野寺防衛大臣は調査して処分すると、半ば認めたような状況になっている。受けとめを伺いたい。
【「無所属の会」代表】
まず、ちょっと事実関係が明確ではありませんので、小野寺大臣にしっかりと調査してもらいたいと思います。はたして本当に自衛隊の人間だったのかどうかということは、私、状況がちょっとわかりませんので。それを特定するだけの、本人が名乗ったとしても、それを断定するだけの材料があるのかどうかという問題だと思います。
それから、そういうことが仮にあればそれは大きな問題ですが、ただ、そのことをもって自衛隊全体というよりは、それは自衛隊に属する一人の個人がそういう暴言を吐いたということだと思います。自衛隊全体についての評価という、そこまで拡大する話ではないと思っています。
私は今回の日報の問題も、自衛隊に隠した責任があるという、それは事実だと思いますが、一連の報道を見ていて思うのは、はたして「本気で調べろ」という指示が稲田大臣(当時)から出ていたのかというところは甚だ疑問で、国会のレクのときに「本当にないのか」と聞いた、それが指示であるというふうに伝えられていますが、もしそれが事実だとすると、私はそれが指示だと受け取れるのかどうか甚だ疑問だと思います。
あれだけ国会でも問題になっていた、あるいは中身の重要さから言えば、本気で調べる気があれば、これは事務方のトップと制服組のトップを呼んで、そして大臣命令を発出する。「ちゃんと調べろ」と言えば、これは調べざるを得なかった。それでも調べなかったら、これは命令に反しているわけですから、組織として極めて大きな問題。シビリアンコントロールにも明確に反することになります。
ただ、「本当にないのか」と聞いた。それを受け取ったほうは、(大臣が)「本気で調べろ」と言っているのか、あるいは本気で調べてもし事実だとすると大臣の首も飛ぶわけですから、「うまくやれ」というふうに受けとめて本気で完全には調べなかった、しかし結果責任は全て陸自に負わせられていると、そんな感じが当時から私は非常にしていたので、陸自に責任があることは間違いありませんが、それ以上に組織のトップに大きな責任があるのではないかと受けとめています。
○政府・行政府で相次ぐ不祥事について
【「FACTA」・宮嶋記者】
柳瀬さんの「首相案件」、佐川さんの改ざん、質は違うが福田財務次官のセクハラ疑惑、何かこう霞が関全体がスポーツ新聞というのか、週刊誌とか、本当に芸能ネタになってしまっている。こういう現象は過去にも何回かあったが、さすがに財務事務次官がというのは私もあまり記憶にない。これはゆゆしきというか、本当に国が壊れていくような感じもするが、霞が関出身の岡田さんとしてはどうか。
【「無所属の会」代表】
先ほど言いましたように、ちょっと財務事務次官の話は、それは個人的な問題。「個人的な問題」というのは、やっていることは女性に対するセクシュアルハラスメントであって、事実だとすれば大きな問題で、次官のやったことですから、そういう意味では組織の問題でもあるのですが、次官個人の問題というふうにも言えないわけではない。しかし、ほかの三つの問題は、これは組織そのものの問題であって、ちょっと一緒には論じられないなとは思っております。
そして、それは役所・霞が関がどうのこうのというより、そういう霞が関になってしまっているのは、先ほど言いましたように「魚は頭から腐る」、その結果ではないかと言わざるを得ないと思います。
【NHK・稲田記者】
福田さんのことに関連してだが、言動があったかどうかは次官の話かもしれないが、その調査の手法、(記者)クラブの女性記者に対して「名乗り出て協力してください」ということを言ってくる財務省のやり方や、あるいは麻生大臣がきょうの会見で、(録音された会話について)「自分の聞いた限り、次官の声だと思う」と言っておきながら、今のところ調査以外のことを特にやろうとしない役所全体の姿勢、こういった点についてはどうお考えか。
【「無所属の会」代表】
それはそれで問題です。ただ、そのほかの三つの問題は民主主義の根幹に関わることで、もちろん女性の人権に関わることですからそれは重要な問題であることは間違いありませんが、それで話が発散してしまって、結局、連休に入ってしまって、連休が明けたらもう何事もなかったようになってしまう、というようなことにならないように十分注意しなければならないと思っています。
○新党結党に向けた議論について(1)
【時事通信・岸本記者】
新党について伺いたい。前回の会見の時点では、まだ現時点で決められていないということだったが、新党の綱領や基本政策の骨子案が出たことで、その後、心境はいかがかということと、その骨子案に対する評価も伺いたい。
【「無所属の会」代表】
まだ説明を受けていませんので。きょう17時から(両院議員意見交換会)ですから、それにも参加したいと思っています。それ以上のことを申し上げることは、現時点でありません。
【時事通信・岸本記者】
綱領や基本政策の骨子案は、まだごらんになっていないということか。
【「無所属の会」代表】
私は見ていますが、まず議論をよく聞いてみたいと思っています。一々コメントすることはありません。私は役員ですので、私の意見をこの場で言うつもりはありません。
【共同通信・小野塚記者】
重ねてだが、綱領案や基本政策案のところで、原発に関して、意見募集の中でも数値について言及があったり、また、きのうの増子幹事長の会見では、原発政策に関して具体的数値がないことについて、後退ではないかという地方からの意見があるということだった。ほかの安保や憲法の中身を見ても希望の党寄りになっているような印象を受けるが、そこについてはいかがか。
【「無所属の会」代表】
これは新党協議会の一つの中間的なまとめだと私は理解しています。したがって幹事長や代表も最終的に合意したものではないと。ましてや、党所属議員の意見はきょうから始まるわけですから、途中でいろいろ申し上げるつもりはありません。
【時事通信・岸本記者】
若干関連して、「無所属の会」の存続について改めて伺いたい。前回の会見では、「新党ができたときは、もう『無所属の会』としては存続していないということになるのだろう」という見通しを示されていたが、これは変わられたか。「無所属の会」の存続の是非について伺いたい。
【「無所属の会」代表】
民進党の会派としての「無所属の会」というのは、ないのだと思います。それは新党になれば希望の人たちもたくさん来られるわけですから。
【時事通信・岸本記者】
民進党の会派としての「無所属の会」はないとしても、「無所属の会」の代表として、「無所属の会」の存続の是非についてはいかがか。
【「無所属の会」代表】
それは、ですから全体がどうなるか決まっていないときに何かお話しすることはできないですよね。何を聞かれても、それ以上言いませんから、私。
【時事通信・岸本記者】
前回の会見との差異について伺いたい。
【「無所属の会」代表】
同じです。
○「ロストジェネレーション」世代の雇用対策について
【「フランス10」・及川記者】
ロストジェネレーションについて伺いたい。2017年の労働力調査によると、35歳から44歳の非正規雇用率は28.6%。男女別で見ると、男性9.8%に対して女性は52.5%と、5倍もの差がある。また、非正規雇用の人の平均年収は2016年の国税庁調査によると172万円と余りにも低い。さらに非正規女性に限ると、その額は148万円となる。このロストジェネレーションの人たちの雇用対策をどのようにして解決すべきだとお考えか。
【「無所属の会」代表】
まず、いわゆるロストジェネレーションと言われる人たちの問題、今お話のあった中で、女性の非正規の率が非常に高いということは、これはロストジェネレーションに特有の現象なのか、それともそれだけではないのか。ロストジェネレーションでとりわけ女性の非正規の割合が高いというふうには必ずしも言えないように私は思います。
ロストジェネレーションの問題というのは、とにかく女性・男性問わず、非正規で働いて不安定な働き方をしている人が多い。ちょうど大学あるいは学校を出て就職するときに就職氷河期で正社員という道が閉ざされていた、そういう人たちがそのままずっと年齢を重ねて今日に至っている、そういう問題だと思います。
私はかつてこの問題を国会で取り上げたこともありますが、安倍さんも何か対策を考えなきゃいかんみたいな、非常におざなりな答弁しか返ってこなかったのですが、今、人が非常に不足しているという全国的な状況、私の選挙区でもとにかく地元の企業を中心に「人が採れない」ということが話題になります。そういうときに、やはり政府も後押しする形で、正社員として働ける、そういう道をつけていくべきではないか。そのためのインセンティブをもっと企業に与えるということも考えなければいけないのではないかと思っています。
○新党結党に向けた議論について(2)
【テレビ朝日・村上記者】
新党結成の時期に関して。国会情勢が混迷する中で、なるべく早く、連休前にも結成するべきなのか、それとも連休中に例えば地元で有権者の意見などを丁寧に聞く必要があるとお考えか。
【「無所属の会」代表】
私の意見は前から申し上げているようなことですので、つまりこの国会中に新党ということについては疑問を呈してきたわけなので、連休の前か後かというのは大した問題ではない。それは執行部が判断する問題だ、私が一々コメントすることはないと思っています。
【時事通信・岸本記者】
改めて確認させていただきたい。前回の会見では、「新党ができたときは、もう『無所属の会』としては存続していないということになるのだろう」とおっしゃっている。それは同じ認識ということでよろしいか。
【「無所属の会」代表】
民進党の会派としての「無所属の会」というのはなくなるのだと思います。
【時事通信・岸本記者】
「無所属の会」そのものの代表として。
【「無所属の会」代表】
それは「無所属の会」の定義の問題だと思いますので。これ以上お答えするつもりはありません。
○国連決議なき武力行使について
【「FACTA」・宮嶋記者】
最初の話を伺いたいが、国連決議なき武力行使というのは国際法に基本的に違反であると。逆に言うと、それは化学兵器の使用があれば、よりそっちのほうが重大な犯罪であるからやってよいと。それが何度か繰り返されているということだと理解するが、それだと、核兵器の開発をやっていることなどからしたら、やはり決議がなくても北朝鮮をやれるという議論にもつながっていくのだろうと私などは思う。常任理事国が既に機能していないから、超法規的だけれどもそれが一つの流れになっていくのかなと。その辺はどうお考えになるか。
【「無所属の会」代表】
いいご質問だと思いますが、これは非常に難しい問題です。確かに、安保理で拒否権を発動すると。しかも最近、ロシアが西側と対立が鮮明になってきている中で、拒否権がより発動される機会が増えている中で、国連が全く身動きとれない。そのときに、「多くの罪なき人々が残虐な方法で殺されていることを国際社会は放置していいのか」と言われれば、それは放置すべきではないということになるのだと思います。
ただ、そのときに武力行使まで含めてやるということになると、いわばノンルールですから、どこまでも拡大していく可能性がある。今のご指摘の中で、北朝鮮が核を準備しているというのは、使ったということとはまた違うのですが、でもノンルールであるがゆえにどんどん、「使っていなくても使う直前だから」とか「放っておいたら使うかもしれないから」ということで拡大解釈されかねない。そういう問題はあるのだと思います。
それから今回のシリアでも、やはりアメリカの国内状況、トランプ大統領を取り巻く現在の状況、それから目をそらすためにと、前回のシリア攻撃のときもそういうことが言われましたが、そういう面もあるわけで、人道的問題だけで、そういうきれいごとだけで武力行使が行われたというふうには言えないと思うわけです。
非常に悩ましい問題。一時は、人道的な罪、(人道に)反する場合は国連決議がなくてもできるんだと。コソボのときはそういう議論がなされましたが、別に国際的にそういう議論が確立しているわけでもないし、やはりそれもどんどん拡大しかねないということです。
コソボの場合はNATOという、国連ではないけれども集団で対応したわけですが、今回は3ヵ国だけということもあります。そういう中で、やすやすとそれを評価したり支持するということは避けるべきだと基本的に私は考えています。
日本政府も、さすがに(武力行使自体を)「支持する」とは言えずに、「決意を支持する」けれども、やったことは「理解する」みたいな、そういう使い分けをして、でも安倍さんはアメリカに行かれれば「私は支持しました」とたぶん言うのでしょうね。そういう国際的な使い分けをしているというのが現状ではないでしょうか。