玉木雄一郎衆院議員は17日、衆院TPP特別委員会で質疑に立ち、TPP発効にあたって、主に食の安全への懸念について質問した。

 玉木議員は、前日の新潟県知事選の結果が出たことについて、TPPの議論の情報が十分出てきていないことへの不安感が選挙結果に影響を与えたと思うと述べ、そのことについて安倍総理に受け止めを聞いた。これに対して安倍総理は、「今、選挙分析を行う立場ではないが、敗れたことは真摯(しんし)に受け止めなければいけない。新たな県政が生まれたので、新潟県に協力しなければいけない」と述べ、TPP審議による影響については言及を避けた。

 続けて、玉木議員は通常国会時のTPP特別委での審議のおさらいとして、当時の西川公也TPP特別委員長が出す予定だった著作の原稿について触れた。西川前委員長の本の出版にあたって、農水省と内閣官房の職員がゲラのチェックに関わっていたのではないかと通常国会時に森山裕前農水大臣に質疑したところ「確認できなかった」という答弁をしたことについて、玉木議員は改めて、「確認できなかったというのはそのような職員がいなかったということか」と山本有二農水大臣に答弁を求めた。山本農水大臣は、「一般論として国会議員から資料要求や事実関係の確認があれば守秘義務の範囲で対応している。ゲラをチェックした担当は確認できていない」と答弁をした。

 その後、玉木議員は、TPP発効による食の安全への影響について、牛や豚の成長を早めるホルモン剤や薬品について触れた。図表のとおり、肥育ホルモン剤や、塩酸ラクトパミンというホルモン剤等の使用に関して、輸入用の牛や豚への各国の規制はEUや中国、ロシアでは禁止されており、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどのTPP参加予定国は使用を認めている。日本は、国内産の牛や豚には使用を禁止しているが、輸入する牛や豚には使用を認めている。

図表

 このことについて、玉木議員は松本純消費者及び食品安全担当大臣に安全性を質疑した。松本大臣は「国際基準に照らして輸入するので大丈夫」と最初は答弁をした。しかし、質疑が進むにつれて、肥育ホルモン剤が健康に影響を与える基準の一つである酢酸メレンゲステロールという物質の残留基準値が国際基準よりも日本の方が高いという松本大臣の答弁を引き出した。玉木議員はこのような状況を懸念したうえで「これから新たに国民の健康を守ることを新設するという時に、TPPに加わることで日本独自では(食の安全のための)規制をすることができなくなることを懸念している」と危惧(きぐ)した。そして、オーストラリアなどのTPP参加国がこうした肥育ホルモン剤を使用した豚を日本に輸出できることについて玉木議員は、「(肥育ホルモン剤等を使用すると)豚1頭12キロも飼料を少なくできるからコストを下げられる。日本の畜産農家は一生懸命工夫をして安全な豚や牛を育てている。平等な競争環境のためにこういうことを認めるのは食の安全性を害すると同時に、日本の農業者にとって不平等な競争を強いることになる。しっかり安全を重視した規制を日本独自で行っていくことを強く求める」と述べ質疑を締めくくった。