衆院のTPP特別委員会は27日、参考人の意見陳述に対する質疑を行い、民進党の升田世喜男議員が、鈴木宣弘東京大学大学院教授と田代洋一横浜国立大学名誉教授に考えを聞いた。
「SBS米は国内の米価にまったく影響を与えていないと政府は言うが、実態はどうなのか」という升田議員の質問に鈴木教授は、「農水省は調査をしたが、調査結果は驚きだ。安値販売が行われたかどうかについてはきちんと聞かずにあいまいにして、仮に安値で販売が行われたとしても影響はないという理屈にすり替えている。これが卒業論文で出されて来たら、『不可』の評価を付けざるを得ない」と断じた。
「TPPの影響額の試算も、根底から崩れるのではないか」と升田議員が見解を問うと、鈴木教授は「その通りだ。TPPの影響を相殺するには毎年1兆円の差額補てん予算が必要になるというのが現状の目安。今の対策で対応できるレベルを、はるかに超えている。そうでないというなら、政府側も試算を出して議論すべきだ」と述べた。
「米国には輸出補助金があるのかどうか論議になったが、実態はどうか」と訊ねると、鈴木教授は「米国には実質的な輸出補助金がある。コメ60キログラムを4千円を売っても、生産者にとって最低限必要な例えば1万2千円との差額の9割を政府が補てんするという不足払いの制度だが、米国は、不足払いは輸出補助金ではないと主張し続けている。最近はコメの国際価格が高かったので、不足払いが生じない年も出てきた。しかし重要なのは、いざと言う時には必ず生産コストに見合う水準との差額は補てんされるので『コメを安心して作ってくれ』という仕組みが準備されているということ」と説明した。
升田議員は、「食は国が責任をもって守るべきこと。コメは日本文化そのものであり、コメを守るということは日本文化を守ることだ。競争、競争で輸出すればいいという論調で、安倍総理が声を大にしている。しかし、足下を見直してコメの内需を拡大し、家族農家も守るべきだ。TPPの丁寧な審議が必要だ」と述べた。