衆院TPP特別委員会で31日、近藤洋介議員が質疑に立った。
近藤議員は冒頭、日ロ関係について安倍総理にただし、「JBIC(国際協力銀行)がロシア最大の銀行であるロシア貯蓄銀行に40億円の単独融資を実行したとの報道がある。JBICは民間と共同して融資をするのが本来の形だが、単独融資は極めて異例の行動、ロシアへの協力だ。日ロ関係を深めて行こうという政府の動きの一環ではないか。その他、資源開発の機関に政府が出資できるという法改正もしている。出資対象にロシアの資源会社も検討されているという経産省の資料もある。12月の日露首脳会談に向けて、さまざまな動きがある」と指摘した。
一方、米国でのTPP批准については、「11月8日は米大統領選挙の投票日だ。同日に米国議会の上院議員3分の1、下院議員全員の選挙がある。オバマ大統領は、米国議会でのTPP批准に意欲を示しているが、次期大統領候補のクリントン、トランプ両氏は否定的だ。安倍総理は、TPP協定について『日本が先に批准することで米国を含めた各国を後押しをしたい』という趣旨の発言をしているが、それはオマバ大統領の残任期間、つまり11月中旬から1カ月程度のいわゆるレイムダックセッションで行われる議会での批准を期待しているということになる。この間に批准されなければ、次の大統領が1月20日に就任式を迎えるので、現実問題として米国議会でのTPP批准が非常に難しいと多く人が認めるところだ。死に体(レイムダック)の議会がこれだけ重要なTPP協定を議論するということが起こり得るのか。非現実的な願望ではないのか」と迫った。
その上で近藤議員は、「12月14日、15日と言われている日ロ首脳会談がある。同盟国の米国はロシア包囲網を築いている。そういう中で日本だけがロシアに急接近をしているわけであり、安倍政権がロシアに対する度を超えた経済協力を前のめりに実施している。TPPの採決を巡って安倍総理が米国議会での批准に願望をつなぎ、国会での批准を強行する異常事態がなぜ起こりうるのか。その背景には日ロ首脳会談でロシアに対して接近しなければいけないことについて、オバマ政権への言い訳として日本がTPPを早期に批准することを示すという外交上のサインではないかという指摘もある」とし、「TPP協定を日ロ交渉の道具として使うことがないようにしてほしい」と強く求めた。
近藤議員はさらに、「日米の通商交渉によって日本は大きな経済的な改革、社会的変革を迫られてきた」と指摘し、「90年代、日米交渉のスタイルは構造協議、包括協議へとがらりと変わった。それまでのモノの話から、構造、規制改革、ルールの見直しへと幅が広がっていった。数多くの中小企業が貸し渋り、貸しはがしなど塗炭の苦しみに遭ってきたという事実を忘れてはいけない。その背景には、さまざまな日米交渉の影があった。日米交渉は自由貿易の枠の中ではあるが、凄まじい経済戦争、厳しい交渉が行われているのものだ。TPPもそのことを踏まえて議論するものだ」と指摘し、「守るべきは守った、攻めるべきは攻めたとは到底言えない。自動車は完成車の分野では不本意な結果になった、牛肉・豚肉でも不本意な結果になったと政府は正直に認めるべきだ。米国はしたたかだ。しかし米国と付き合わなければならない。そのためには、TPPについてのしっかりとした議論がこれからも必要だ」と訴えた。