衆院本会議で18日午後、野党4党(民進、共産、自由、社民)が提出した金田勝年法務大臣不信任決議案の採決が行われ、与党の反対多数で否決された。山尾志桜里議員が趣旨説明を、逢坂誠二議員が賛成討論を行った。

■山尾志桜里議員趣旨説明

 趣旨説明で山尾議員は2年前の衆院本会議で、刑事訴訟法改正案に対する修正案の賛成討論の際、「力なき正義は無力であるが、正義なき力は暴力である」という言葉を紹介したと語り、「『共謀罪』が成立すれば、『共謀』が罪を構成するわけだから、話し合いの有無、そして中身を知るために、捜査機関は一般市民のコミュニケーションに事前に広く監視の網をかける力を持つことになる。一人ひとりの個人が、自由に集まり、他の個人とつながり、言葉を交わし合う、このコミュニケーションの自由は民主主義の根幹だから、この『共謀罪』が捜査機関ひいては国家に与えるコミュニケーションの監視権能は、自由と民主主義を危うくする『力』そのもの」だと指摘した。「共謀罪」が全くテロ対策の役に立たないということも審議を重ねるほどに明らかになったとし、「まさに、『正義なき力』、自由と民主主義に対する『暴力』ともいうべき法案。277、従来の数え方に倣えば300を超す既存の罪について、処罰時期ひいては捜査の開始時期を一気に『話し合い』の段階まで前倒すのがこの『共謀罪』」だと法案の最大の問題点を突いた。

 そのうえで山尾議員は、これだけ重大で深刻な共謀罪を所管する金田法務大臣が、これまでの議論で「答弁変遷」「答弁矛盾」「答弁不能」「答弁放棄」を重ね、国会・国民に対して説得的に説明責任を果たそうとする意思もなければ、残念ながら能力もない状況であり、「これ以上議論を続けることは無意味である以上に有害だ」と断じた。

 不信任の理由として山尾議員は、(1)説明責任を果たそうとする意思の欠如(2)説明責任を果たそうとする意思のみならず能力の欠如――を指摘した。

 (1)については2月6日に金田大臣が報道機関に配布した「金田ペーパー」を取り上げ、刑事局長や外務大臣に聞いてほしい、予算委員会ではなく法務委員会で聞いてほしい、質問は成案後にしてほしいなどと行政府の一員である法務大臣が立法府での審議の時間・場所・相手を自ら指定し、権力を監視すべき立場の報道機関に配布したことを「異様だ」とする声もあったと述べた。

 (2)については、本法案が刑罰権の発動を基礎づけ、身柄拘束を含む国民の重大な権利を制限する法案であるにもかかわらず、法案の内容を理解しないままに官僚の作った答弁書を読み上げ、無関係な答弁で質問をはぐらかし、論理が破たんしていても答弁を訂正しないどころか、場合によっては論理破たんに気づくことすらできないといった「あまりにお粗末な態度で、これでは法秩序の維持や国民の権利擁護など、法が法務大臣に要求している役割を果たすことは到底できない」と説明した。

 また、共謀罪法案の欠陥として(1)テロ対策の役に立たないこと(2)政府が唯一のよりどころとする「TOC条約(国際組織犯罪防止国連条約)批准の必要性」は新たな包括的共謀罪なしに批准できることが質疑から明らかになってきたこと(3)一般市民が広く警察による情報収集・調査・捜査の対象となり、ネットコミュニケーションも丸裸になること――等を指摘した。

PDF「金田法務大臣不信任決議案 趣旨説明(予定稿)」金田法務大臣不信任決議案趣旨説明(予定稿)

■逢坂誠二議員賛成討論

逢坂誠二議員

 金田勝年法務大臣不信任決議案の賛成討論に立った逢坂誠二議員は、その理由について「国務大臣として資質にはなはだしく欠ける、ただその一点に尽きている」と強く指摘した。

 今国会に提出した共謀罪法案について政府は、過去の共謀罪法案とは「別物」で「一般の方々は対象にならない」と声高に説明してきたことから、「以前の共謀罪と別物とはどういうことなのか」「一般の方々が対象にならないとはどういう意味か」と繰り返し質問したが、金田大臣は一般人が対象にならない根拠も、以前の共謀罪とは別物との理由も示すことができなかったと問題視した。

 共謀罪法案に関して共謀に加えて実行準備行為があってはじめて処罰が可能であり、処罰対象は組織的犯罪集団に限られると政府が強調していることについて「組織的犯罪集団という概念を付加し、あたかも対象団体を絞り込んだかのような印象を与えているが、その概念があってもなくても、犯罪が成立する団体の範囲は従来も今回も一緒だと政府は答弁している。つまり対象団体を絞り込んだかのような印象操作は誤りだ」と政府答弁の矛盾を突いた。

 このように深刻な問題を内包する共謀罪法案の審議で、金田法相は「法案が欠陥だらけであることにも気づかず、野党からの質問を受けても理解しようともせず、平然と官僚答弁を読み上げることや、官僚に答弁を肩代わりしてもらうことだけに腐心している。誠に残念という他はない」と指弾し、良識ある議員に対し不信任決議案への賛同を求め、討論を終えた。

PDF「金田法務大臣不信任賛成討論案(予定稿)」金田法務大臣不信任賛成討論案(予定稿)

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