参院法務委員会で13日、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)に関して、日本大学危機管理学部教授の福田充氏、弁護士の山下幸夫氏、一橋大学名誉教授・弁護士の村井敏邦氏を参考人として招いて質疑が行われ、民進党会派からは真山勇一議員が質問に立った。
真山議員は福田参考人に対し、(1)政府・与党はテロの未然防止のためにTOC条約(国際組織犯罪防止条約)の締結が必要だと主張するが、国連立法ガイドの監修に当たったパスタス教授は、TOC条約はマネーロンダリングや麻薬取引といった経済的な犯罪などが対象で、テロ対策ではないと指摘している点をどう見るか(2)国連の人権理事会でプライバシー権を担当するケナタッチ特別報告者が共謀罪法案について、監視が強まりプライバシーの権利などが制限される恐れがあると懸念を示したことをどう見るか――を質問した。
福田参考人は、(1)に関して、「2014年の国連安保理決議でもテロ組織と犯罪組織はかなり部分的に重なっている、かつ融合し連携し合っているとの指摘がある。犯罪組織がマネーロンダリングした金がテロ組織に流入しているという実態がある。テロ対策のためにもこうしたテロ組織に対して資金や資源を横流ししている犯罪組織を取り締ることは間接的にテロ対策に有効に聞いてくる」旨答えた。(2)については、「プライバシー保護のみの指摘で、テロ対策や組織犯罪対策とどうバランスをとっていくべきかというところでは、ややバランスを欠いた意見と感じた」などと述べた。これに対して真山議員は、「(TOC)締結を大事にするならば、国連のそうした一連の法案に対する反応を大事に尊重すべきだ」との考えを表明した。
真山議員はさらに「ローンウルフ型の突発的な犯罪には共謀罪法案は有効に機能しないのではないか、令状なしの捜査など強硬な態度で臨むとなると人権やプライバシーを守ることはできるのか福田参考人の認識をただした。
福田参考人は「国際的なテロ組織の資金源を断つことによって弱体化することにより世界中に呼応して発生しているローンウルフ型のテロを間接的に減らす効果がある」と述べた。人権・プライバシーについては、「英国の2000年・2006年のテロリズム法や米国型のパトリオット法などをそのまま日本に持ってくれば人権・自由を侵害する恐れがあるが、そうした英米のテロ対策よりは人権・自由に十分配慮している」と述べる一方、「シビリアンコントロールが完全に機能していることが大前提」と強調した。
真山議員は市民運動、環境保護活動などを行う一般人が対象になる恐れについて山下参考人に質問した。山下参考人は「(処罰対象者を)誰が判断するかというと第1次的には警察などの捜査機関。そして今回の法案は計画よりも前の段階から日常的に特定の団体の構成員や周辺者を監視しなければ、計画や準備行為、組織的犯罪集団かどうかを判断できない。そいうことができる権限を警察や捜査機関に与える法律であるということからすると、結局普通の団体も含めてあらゆる団体が捜査の対象になり得る。そうしたところに所属している一般人が捜査の対象になり得る。この法律はどこまで行っても一般人も含めたすべての団体の構成員や周辺者が捜査の対象になり得ることが前提で、一般人は関係ないとは言えない」と語った。